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孤島症候群(前編)(2006年放送版第06話、構成第09話・DVD版第10話/2009年放送版・時系列第10話) スタッフ 脚本:村元克彦 絵コンテ:吉岡忍、荒谷朋恵 演出:吉岡忍 作画監督:荒谷朋恵 原作収録巻 第3巻:短編集『涼宮ハルヒの退屈』より中編『孤島症候群』P186~P262まで。計38ページをアニメ化しているが、原作から大きく改変されている部分も多々ある。 DVD収録巻 『「涼宮ハルヒの憂鬱」第5巻』に収録。 内容紹介 原作では付いてこなかった、キョンの妹が合宿に参加。そのためにキョンの妹を入れたのかは不明だが、原作にあった飲酒シーンはカットされている。原作とは違う展開になっておりセリフも一部カット。 孤島症候群には、深夜アニメのゲスト脇役には考えられないクラスの大物声優が出演している。(多丸圭一=井上和彦、新川=大塚明夫等) 2006年放送順では、この後解決編と思いきや、別のエピソードがwDVDではそのまま続き。 2006年放送順の提供バックのねこマンは『ビキニねこマン』。(DVD第03巻に収録) 次回予告 TV版(『涼宮ハルヒの憂鬱』第5巻に収録): ハルヒ:次回!涼宮ハルヒの憂鬱、第8話! キョン:違う!この人に学習能力はないんですか?次回涼宮ハルヒの憂鬱第7話『ミステリックサイン』。え?、解決編しないの? DVD版: 有希:次回、『孤島症候群(後編)』。あけてあげない。 放送版とDVD版との違い 部室に七夕の笹飾りが描き加えられてる。(確認求む) フェリー上でハルヒ達がイカ探し?にデッキに出かけるときに、ジュースの空き缶が人数分になっていないのを修正。 パロディ・小ネタ 長門がフェリーの中で飲んでいるのはひやしあめ。 フェリーからクルーザーに乗り換えたあたりは徳島県。 蛇→スネーク→大塚明夫ネタ。(メタルギアシリーズの主人公ソリッドスネークを大塚氏が演じているから) 振り向いて大好きと言う→中山秀行、飯島直子、松本明子が出演していた長寿テレビ番組『DAISUKI』が元ネタ。CM前のアイキャッチでアイドルが『大好き』というのが決まりだった。 『究極のメニュー』→多丸圭一役の井上和彦が美味しんぼの山岡士郎を演じていることから。 キャスト・スタッフ(詳細) キャスト 1段目 キョン:杉田智和 涼宮ハルヒ:平野綾 長門有希:茅原実里 朝比奈みくる:後藤邑子 古泉一樹:小野大輔 2段目 新川:大塚明夫 多丸圭一:井上和彦 多丸裕:森川智之 森園生:大前茜 キョンの妹:あおきさやか スタッフ 脚本:村元克彦 絵コンテ:吉岡忍、荒谷朋恵 演出:吉岡忍 作画監督:荒谷朋恵 動画検査:中野恵美 美術設定:平床美幸 色指定検査:下浦亜弓 制作マネージャー:八田真一郎 原画 牧田昌也 牟田亮平 高田謡子 河浪栄作 高橋真梨子 中野良一 内海鉱子 荒谷朋恵 動画 川崎洋平 佐藤達也 檜垣影子 Ani Village 仕上げ 今泉ひとみ 石原裕介 豊澤綾 木村好子 江田美穂子 背景 平床美幸 鵜ノ口穣二 袈裟丸絵美 加藤夏美 川内淑子 松浦真治 伊藤豊 Ani Village 撮影 中上竜太 田中淑子 高尾一也 山本倫 石井和沙 浜田奈津美 梅津哲郎 (ポストプロダクションなどは省略) 放送日程 2006年(野球中継などは考慮せず) チバテレビ:2006年5月7日24時00分-24時30分 テレ玉:2006年5月7日25時30分-26時00分 tvk:2006年5月8日25時15分-25時45分 KBS京都:2006年5月8日25時30分-26時00分 テレビ北海道:2006年5月8日26時00分-26時30分 サンテレビ:2006年5月9日24時00分-24時30分 TBC東北放送:2006年5月9日26時00分-26時30分 東京MXテレビ:2006年5月10日25時30分-26時00分 テレビ愛知:2006年5月10日26時28分-26時58分 広島ホームテレビ:2006年5月13日26時05分-26時35分 TVQ九州放送:2006年5月13日26時40分-27時10分 2009年 サンテレビ:2009年6月4日24時40分-25時10分 テレ玉:2009年6月4日25時00分-25時30分 新潟テレビ21:2009年6月4日25時45分-26時15分 東京MXテレビ:2009年6月5日26時30分-27時00分 tvk:2009年6月5日27時15分-27時45分 TVQ九州放送:2009年6月6日26時40分-27時10分 テレビ和歌山:2009年6月7日25時10分-25時40分 テレビ北海道:2009年6月08日25時30分-26時00分 KBS京都:2009年6月09日25時00分-25時30分 広島テレビ放送:2009年6月09日25時29分-25時59分 チバテレビ:2009年6月09日26時00分-26時30分 奈良テレビ:2009年6月09日26時00分-26時30分 仙台放送:2009年6月09日26時08分-26時38分 メ~テレ:2009年6月09日27時55分-28時25分 Youtube:2009年6月10日22時00分-2009年6月17日21時59分(1週間限定配信) RKK熊本放送:2009年12月20日26時15分-26時45分 DVDチャプター 使用サントラ 0 00~1 08『ミステリータイム』サントラ06収録 1 08~2 38 OP 2 39~3 17 SE 3 18~3 50『コミカルハッスル』サントラ06収録 3 51~5 26 『恐怖のはじまり』サントラ06収録 5 27~6 11 SE 6 12~7 39『何かがおかしい』サントラ02収録 7 40~8 10 SE 8 11~9 29『おいおい』サントラ02収録 9 30~10 21 SE 10 22~11 20『SOS団始動!』サントラ05収録 11 21~11 50 SE 11 51~13 32『好調好調』サントラ03収録 13 33~14 22 SE 14 23~15 20『ピーチバカンス』サントラ06収録 15 21~16 03 SE 16 04~16 28『SOS団始動』サントラ05収録 16 29~17 34 SE 17 35~18 27『やれやれおいおい』サントラ05収録 18 28~18 50 SE 18 51~19 51『ザ・強引』サントラ05収録 19 52~21 14 SE 21 15~22 20『恐怖のはじまり』サントラ06収録 22 21~23 24 ED 23 25~23 40『冒険でしょでしょ?予告アレンジ』サントラ02収録 一覧 新アニメ 1期時系列 1期放映順 DVD 原作小説(巻) コミック収録巻 アニメサブタイトル #01 第01話 第ニ話 第01巻 憂鬱(1) 第01巻 涼宮ハルヒの憂鬱 I #02 第02話 第三話 第01巻 憂鬱(1) 第01巻 涼宮ハルヒの憂鬱 II #03 第03話 第五話 第02巻 憂鬱(1) 第01巻 涼宮ハルヒの憂鬱 III #04 第04話 第十話 第02巻 憂鬱(1) 第01巻 涼宮ハルヒの憂鬱 IV #05 第05話 第十三話 第03巻 憂鬱(1) 第02巻 涼宮ハルヒの憂鬱 V #06 第06話 第十四話 第03巻 憂鬱(1) 第02巻 涼宮ハルヒの憂鬱 VI #07 第07話 第四話 第04巻 退屈(3) 第03巻 涼宮ハルヒの退屈 #08 - - 新第04巻 退屈(3) 第03巻 笹の葉ラプソディ #09 第08話 第七話 第04巻 退屈(3) 第04巻 ミステリックサイン #10 第09話 第六話 第05巻 退屈(3) 第04巻 孤島症候群(前編) #11 第10話 第八話 第05巻 退屈(3) 第04巻 孤島症候群(後編) #12 - - 新第02巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #13 - - 新第02巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #14 - - 新第03巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #15 - - 新第03巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #16 - - 新第04巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #17 - - 新第04巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #18 - - 新第05巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #19 - - 新第05巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #20 - - 新第06巻 溜息(2) 第05巻 涼宮ハルヒの溜息 I #21 - - 新題06巻 溜息(2) 第05巻 涼宮ハルヒの溜息 II #22 - - 新第07巻 溜息(2) 第05-06巻 涼宮ハルヒの溜息 III #23 - - 新第07巻 溜息(2) 第06巻 涼宮ハルヒの溜息 IV #24 - - 新第08巻 溜息(2) 第06巻 涼宮ハルヒの溜息 V #25 第11話 第一話 第00巻 動揺(6) 未制作 朝比奈ミクルの冒険 Episode00 #26 第12話 第十二話 第06巻 動揺(6) 第06巻 ライブアライブ #27 第13話 第十一話 第06巻 暴走(5) 第07巻 射手座の日 #28 第14話 第九話 第07巻 オリジナル 未制作 サムデイ イン ザ レイン
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ATTENTION SSを御覧の際は 部屋を明るくし、画面に近づきすぎないよう、 ご注意ください。 挿絵 おまけのバレンタインイラスト ・ 新・孤島症候群 序 ・ 新・孤島症候群 前 ・ 新・孤島症候群 中 ・ 新・孤島症候群 後 ・ 新・孤島症候群 誤 ・ 新・孤島症候群 解 ・ 新・孤島症候群 結 なんとか完結しました。
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孤島症候群(後編)(2006年放送版第08話、構成第10話・DVD版第11話/2009年放送版・時系列第11話) スタッフ 脚本:志茂文彦 絵コンテ:荒谷朋恵 演出:荒谷朋恵 作画監督:門脇聡 原作収録巻 第3巻:短編集『涼宮ハルヒの退屈』より中編『孤島症候群』。P182-P186、P263-303の計43ページをアニメ化しているが、原作から一部改変及び、追加要素あり。 DVD収録巻 『「涼宮ハルヒの憂鬱」第5巻』に収録。 紹介 原作から後半の展開を中心に大幅改編。原作は会話中心で展開が地味だが、アニメでは何かの影を追ってキョンとハルヒが崖から転落して洞窟で雨宿りしたり、ハルヒが全員を集めて推理披露をして謎を解くなどという違いがある。 ミステリックサインに負けないくらいのパロディ回。 なお、原作での時系列ではこの後に第5巻『涼宮ハルヒの暴走』に収録されている短編の『エンドレスエイト』というエピソードがあるが、2006年版ではアニメ化直前に憂鬱の尺が増えたので尺が足りなくなり泣く泣くカットしたと監督が述べている。 2006年放送順の提供バックのねこマンは『幽霊ねこマン』。(DVD第04巻に収録) 次回予告 TV版(TV版(『涼宮ハルヒの憂鬱』第5巻に収録):) ハルヒ:次回、涼宮ハルヒの憂鬱、第14話。 キョン:違う!次回、涼宮ハルヒの憂鬱第9話『サムデイ イン ザ レイン』 ハルヒ:おつかれさま……。キョン。 DVD版: (時系列的には『朝比奈ミクルの冒険 Episode00』が入るが、そのDVD収録が1話に回されているので、次の『ライブアライブ』が予告に入る。) 有希:次回、『ライブアライブ』。こんにちはENOZです。 放送版とDVD版との違い 足の位置や置物や階段の位置などを修正。追加カットはなし。 パロディ・小ネタ 黒いタイツの人物→『名探偵コナン』 人を集めたの推理ショーのBGMの最後→『名探偵コナン』 逆転裁判ネタ。(ハルヒ→成歩堂龍一、古泉→御剣怜待、みくる→綾里真宵) 実写シーン→(ミニチュアと某演出家達との合成) キャスト・スタッフ(詳細) キャスト 1段目 キョン:杉田智和 涼宮ハルヒ:平野綾 長門有希:茅原実里 朝比奈みくる:後藤邑子 古泉一樹:小野大輔 2段目 新川:大塚明夫 多丸圭一:井上和彦 多丸裕:森川智之 森園生:大前茜 キョンの妹:あおきさやか スタッフ 脚本:志茂文彦 絵コンテ:荒谷朋恵 演出:荒谷朋恵 作画監督:門脇聡 動画検査:中野恵美 美術設定:平床美幸 色指定検査:下浦亜弓 制作マネージャー:八田真一郎 原画 牧田昌也 牟田亮平 高田謡子 河浪栄作 高橋真梨子 中野良一 内海鉱子 中野江美子 内藤直 荒谷朋恵 動画 古川かおり 井上真希 遠藤亜矢子 引山佳代 仕上げ 石原裕介 豊澤綾 北岡なな子 山森愛弓 嶋智子 背景 Ani Village李天馥 林貞女我 柳丙慮 申允美 李美眞 撮影 中上竜太 田中淑子 高尾一也 山本倫 石井和沙 浜田奈津美 梅津哲郎 (ポストプロダクションなどは省略) 放送日程 2006年(野球中継などは考慮せず) チバテレビ:2006年5月21日24時00分-24時30分 テレ玉:2006年5月21日25時30分-26時00分 tvk:2006年5月22日25時15分-25時45分 KBS京都:2006年5月22日25時30分-26時00分 テレビ北海道:2006年5月22日26時00分-26時30分 サンテレビ:2006年5月23日24時00分-24時30分 TBC東北放送:2006年5月23日26時00分-26時30分 東京MXテレビ:2006年5月24日25時30分-26時00分 テレビ愛知:2006年5月24日26時28分-26時58分 広島ホームテレビ:2006年5月27日26時05分-26時35分 TVQ九州放送:2006年5月27日26時40分-27時10分 2009年 サンテレビ:2009年6月11日24時40分-25時10分 テレ玉:2009年6月11日25時00分-25時30分 新潟テレビ21:2009年6月11日25時45分-26時15分 東京MXテレビ:2009年6月12日26時30分-27時00分 tvk:2009年6月12日27時15分-27時45分 TVQ九州放送:2009年6月13日26時40分-27時10分 テレビ和歌山:2009年6月14日25時10分-25時40分 テレビ北海道:2009年6月15日25時30分-26時00分 KBS京都:2009年6月16日25時00分-25時30分 広島テレビ放送:2009年6月16日25時29分-25時59分 チバテレビ:2009年6月16日26時00分-26時30分 奈良テレビ:2009年6月16日26時00分-26時30分 仙台放送:2009年6月16日26時08分-26時38分 メ~テレ:2009年6月16日27時55分-28時25分 Youtube:2009年6月17日22時00分-2009年6月24日21時59分(1週間限定配信) RKK熊本放送:2009年12月27日26時20分-26時50分 DVDチャプター 使用サントラ 0 00~0 14 SE 0 15~1 34『カマドウマ』サントラ05収録 1 35~3 04 OP 3 05~4 30 SE 4 31~6 37『恐怖のはじまり』サントラ06収録 6 38~10 12 SE 10 13~12 00『恐怖のはじまり』サントラ06収録 12 01~14 37 SE 14 38~15 25『ミステリータイム』サントラ06収録 15 26~16 15『恐怖のはじまり』サントラ06収録 16 16~17 38 SE 17 39~19 36『ザ・強引』サントラ05収録 19 37~19 47『名探偵が解決』サントラ06収録 19 48~20 27 SE 20 28~22 19『ザ・ミステリアス』サントラ02収録 22 20~23 24 ED 23 25~23 40『冒険でしょでしょ?予告アレンジ』サントラ02収録 一覧 新アニメ 1期時系列 1期放映順 DVD 原作小説(巻) コミック収録巻 アニメサブタイトル #01 第01話 第ニ話 第01巻 憂鬱(1) 第01巻 涼宮ハルヒの憂鬱 I #02 第02話 第三話 第01巻 憂鬱(1) 第01巻 涼宮ハルヒの憂鬱 II #03 第03話 第五話 第02巻 憂鬱(1) 第01巻 涼宮ハルヒの憂鬱 III #04 第04話 第十話 第02巻 憂鬱(1) 第01巻 涼宮ハルヒの憂鬱 IV #05 第05話 第十三話 第03巻 憂鬱(1) 第02巻 涼宮ハルヒの憂鬱 V #06 第06話 第十四話 第03巻 憂鬱(1) 第02巻 涼宮ハルヒの憂鬱 VI #07 第07話 第四話 第04巻 退屈(3) 第03巻 涼宮ハルヒの退屈 #08 - - 新第01巻 退屈(3) 第03巻 笹の葉ラプソディ #09 第08話 第七話 第04巻 退屈(3) 第04巻 ミステリックサイン #10 第09話 第六話 第05巻 退屈(3) 第04巻 孤島症候群(前編) #11 第10話 第八話 第05巻 退屈(3) 第04巻 孤島症候群(後編) #12 - - 新第02巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #13 - - 新第02巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #14 - - 新第03巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #15 - - 新第03巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #16 - - 新第04巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #17 - - 新第04巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #18 - - 新第05巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #19 - - 新第05巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #20 - - 新第06巻 溜息(2) 第05巻 涼宮ハルヒの溜息 I #21 - - 新第06巻 溜息(2) 第05巻 涼宮ハルヒの溜息 II #22 - - 新第07巻 溜息(2) 第05-06巻 涼宮ハルヒの溜息 III #23 - - 新第07巻 溜息(2) 第06巻 涼宮ハルヒの溜息 IV #24 - - 新第08巻 溜息(2) 第06巻 涼宮ハルヒの溜息 V #25 第11話 第一話 第00巻 動揺(6) 未制作 朝比奈ミクルの冒険 Episode00 #26 第12話 第十二話 第06巻 動揺(6) 第06巻 ライブアライブ #27 第13話 第十一話 第06巻 暴走(5) 第07巻 射手座の日 #28 第14話 第九話 第07巻 オリジナル 未制作 サムデイ イン ザ レイン
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孤島症候群 ◆a.Db6/XzHU さて――どうするかな。 目の前の肉塊から目を逸らし、ゆっくりと辺りを見回しながらこれからの行動指針を思考する。 もう、人を殺す事には躊躇いを持たない。持つ必要なんて、無い。 ハルヒや、妹、SOS団のメンバー、それに朝倉。皆で元の――あの馬鹿騒ぎをして楽しんだあの日だまりの日常へと帰還する。 俺は、そのたった一つの事だけを考えて行動すれば良い。 まず必要なのは、情報統合思念体を満足させる事。 ハルヒと親しくなった奴を殺し、その時のハルヒの感情のうねりを、大規模な情報爆発とやらを見せ付ける。 どうなるかはわからん……が、一度朝倉に襲われた時、朝倉は言っていた。 あいつは――ハルヒは“人類、ひいては情報統合思念体にとっての、自立進化の鍵となる” つまり、あいつら情報統合思念体にとって、多大な観測結果を献上する事が出来る。 そうすれば、あいつらは目的を終える。 よって俺達は解放される筈だ!! なんて、こんなのは希望的観測100%の考えに過ぎないってのはそこらの小学生でもわかるこった。 少し考えるだけで否定条件がすらすらと浮かんできやがる。 情報統合思念体の望みとやらがこれだけとは限らないんじゃないのか? ハルヒの世界を思うままに改変する能力はどうなる? わざわざこんな大掛かりな仕掛けを用意した理由は? 長門の横にいたあのおっさんは誰なんだ? とまあ、こんなことをうだうだ愚痴ってても無駄に疲れるだけだってのもわかってる。 とりあえずもう一つは、俺達以外の参加者の殲滅。 あの銀髪の少年が……カヲル君とか呼ばれてた少年がオレンジ色の液体にされたあの空間。 あの空間には俺の常識の――SOS団に巻き込まれるうちに許容範囲がいたく広まった俺の常識を遥かに超えた化け物達が居た。 人とかけ離れた鼠色で巨躯の化け物 手足が無く、一本足と巨大な顔の化け物 頭には頭巾、口元をマスクで隠す、その姿はまるで忍者のような蛙の化け物 ……付き合いきれん。 ざっと頭に浮かんできただけでもこんな化け物達が居る空間で、ただの小学生の女の子が、使えもしない能力を持つ超能力者が、臆病な未来人が、常識と呼ばれるものを持っているが欠片も使おうとしない女子高生が、生き残れるわけないだろう! 故に必要なのは、殲滅だ。 普段ならこんな台詞口に出すのも恥ずかしい……だが、これ程ぴったりくる言葉は不幸にして俺の頭には浮かんでこなかったんだ。 ◆ 行動の指針は決まった。 だが具体的にはどうする? デイバッグから地図を取り出して確認してみるが、まずどこに向かうか、それが中々決まらない。 ルートは二つ。 南に向かって進み、遊園地もしくは温泉を目指すルート。 もう一つは東、倉庫群や図書館、中・高等学校に警察署、ホテル、公民館、海の家、デパート。 と続くルート。 どうするかな。 南のルートには遊園地があり、人は集まりそうだ。 温泉も同じ、この二つには善悪問わず人が集まりそうな気もする、がこの閉鎖的な空間。 しかも殺し合いを強要されている状況で、わざわざこんな目立つところに集まろうとするか? のこのこ集まってくるとすれば、それは状況把握もできないお馬鹿さんか、自分の力によっぽど自信がある奴だ。 どちらとも――特に後者は確実に殺しておきたい存在だ。 力を持つという事はそれだけあっさりと人が殺せるって事だ……今の俺のように。 善悪は置いといても、力の強い奴はなるべく早くに殺しておきたい。 ……ハハっ、我ながらぶっ壊れた台詞だな。 笑えない。 逆に東のルート。 南に負けずこちらも人が集まりそうなルートだ。 力の無いただの一般人は警察署に助けを求めに行くだろうし、何か使えそうな道具を求めに行く奴 は倉庫郡や学校、公民館やデパートに向かうかもしれん。 ハルヒのような緊迫感の無い奴は……おそらく海の家に向かうだろうな。 こちらも南と一緒だ。 力ない者を助けるヒーロー、力を持った馬鹿、狡く生き延びようとする者。 どんな奴が集まっても不思議じゃない。 と、言うかこんな事を考え始めたらきりがない。 どちらの道を選んでもそれぞれメリットはある。 もとより、参加者を殲滅すると決めた以上どちらのルートにも向かわなくてはならない。 さて――どうするかな。 【B-2 学校/一日目・未明】 【名前】キョン@涼宮ハルヒの憂鬱 【状態】健康、0号ガイバー状態、返り血に塗れている 【持ち物】金属バット@現実、ディパック(支給品一式×2、不明支給品1~2) 【思考】 1:すまんが皆殺させてもらう。 2:南と東、どっちへ向かうかな 3:ハルヒと親しくなった奴は殺す。 4:皆で元の世界に帰りたい。 時系列順で読む Back つよきす~mighty heart~ Next とある魔術の超電磁砲 投下順で読む Back 怪物の森 Next 接触! 怒涛の異文化コミュニケーション! 0号ガイバーの憂鬱 キョン 強殖装甲リリカルシスター
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「それにしても晴れて良かったですね」 「ああ、そうだな」 …。 上を見上げれば青い空、周りを見渡すと青い海。春らしい暖かい風が甲板に立つ俺の顔を優しく撫でる。 …。 「ほんの数日前に雪が降ったとは思えませんね」 「……まったくだ‥」 …。 数日前に行われた悪夢を思い出す。春休み直前の休日、季節外れの大雪が俺達の街を襲った。 この雪に大喜びしたハルヒにより校庭で生徒会との雪合戦が行われたのだ。 己の全存在を賭けた総力戦となったその戦いは……ハルヒによる‘F・T・A’(フライング・タニグチ・アタック)の炸裂、それに伴う谷口の裏切り、暴走した二人の宇宙人による地球崩壊の危機、そして最後は……ん?後編はどうしたんだって?。 ああ…とある事情により無期限延期だ。 …勘違いしないでもらいたい……どうやってまとめたら良いかわからなくてなって、悩み、途方に暮れたあげく 「……無かった事に出来ないかな‥」 などと現実逃避を起こしつつ放置していた訳では無い……断じて無い。 ……いつしか後編が発表される時が来るだろう……多分な‥。 …。 …。 …。 「あの…」 「……」 「もしもし?」 「………ん?」 「どうされましたか、ボーッとして?」 …。 古泉が怪訝な表情を浮かべ俺を見ていた、 …。 「ああ、少し言い訳をな…」 「言い訳?」 「……こっちの話だ」 「そうですか、そろそろ到着しますよ」 …。 長い船旅もようやく終わりを遂げようとしていた。 …。 「キョン!古泉君!降りる準備をしなさい!」 …。 客室からハルヒの声が響く……声がデカイんだよ。 …。 「では行きますか」 「ああ」 …。 …。 今の状況を説明せねばならんな。俺達SOS団は多丸圭一さんの別荘へと向かっている。ちなみに去年の夏に行った場所とは別だ。 …。 …。 多丸さんがまた新しい別荘を建てたのですよ、そして是非とも僕らを招待したいと言われまして …。 ……以上、古泉の言葉である。 当然その誘いをハルヒが断る訳も無く、合宿と称してSOS団全員で向かっている訳だ。 無論これは表向きの理由で実際は古泉達機関によるハルヒの退屈を紛らわす為のイベントなのだ。 ……それにしてもわざわざ別荘まで建てるか普通…。 …。 …。 「お久しぶりです皆様方」 「ようこそいらっしゃいました」 …。 港に着いた俺達を出迎えてくれたのはおなじみの新川さん、森さん、前回と同じ完璧に執事、メイドに成りきっている……たいしたものだ。 …。 「それじゃ~しゅっぱ~つ!!」 …。 挨拶を済ませた俺達一行は前回と同じくクルーザーに乗り換え多丸圭一氏の待つ無人島へと向かった。 …。 「ねぇ古泉君、本当にその島に出るんでしょうね?」 「はい、僕はその様に聞いています。そうですよね、新川さん?」 「はい、私も影の様なものを見ました、あれは明らかに人外のものですな」 「本当!?さっそく詳しい話を聞かせてもらえるかしら!」 …。 …。 …おっと、説明していなかったな。今俺達が向かっている無人島はただの無人島では無い、いわく付きの無人島なのだ。 当時その島は島流しに使われていたという話らしい。 島流しとは江戸時代に行われていた刑罰の一つで罪を犯した罪人が島に閉じ込められるというものだ。 あまりにもの過酷な生活で刑期を終え再び本土に戻れる者はほんの一握りのみ。多くの者はその島で死を迎える事となる。 …まったく古泉達はとんでもない所に招待してくれたもんだ。喜んでいるのはハルヒくらいなもんだろう。朝比奈さんはずっと怯えているし、長門は……まぁ、いつも通りか…。 ちなみに妹が今回来ていないのはこれが原因である……ん?俺はどうかって?全くの無問題だ。俺は幽霊など信じていない‥…まだ出会ってないからな。 …。 「見えて来た!」 …。 はしゃぐハルヒの指さすその先に島があったここが? ………!? ……なんだ…この寒気は…。 …。 「……」 「キョンくん、どうしたの?」 …。 朝比奈さんが心配そうな表情を浮かべている。 …。 「……なんでもありませんよ朝比奈さん」 「そう?なんかキョンくん暗い顔してたから…」 …。 ……なんでも無いとは言ったが俺は強烈な予感を感じた…いや、確信と言っても良いだろう。 …。 ……何かが起きる……取り返しのつかない何かが…。 …。 …。 【続・孤島症候群】 …。 …。 「やぁ、遠い所良く来てくれたね」 「お世話になりま~す♪」 …。 島に着いた俺達を出迎えてくれたのは多丸圭一さん、裕さん兄弟だ。圭一さんが会社の社長で裕さんがその社員だ……まぁ表向きはな。 …。 「では部屋に案内いたしますので私に付いてきて下さい」 …。 森さんの言葉だ。 森さん……森さんって一体何歳なんだろうか?そしてその立場は? 以前から抱いていた疑問だ。俺はその疑問を古泉にぶつけてみる事にした。 …。 「古泉」 「はい?」 「聞きたい事があるのだが」 「なんでしょうか?」 「え~とだな……」 …。 さすがに本人の前ではな…。 そんな俺の様子に気付いたのか …。 「森さん、先に涼宮さん達を案内していただいてよろしいですか」 「はい」 …。 さすが古泉だ、空気が読める。 ハルヒ達が見えなくなってから古泉が切り出した。 …。 「聞きたいのは今回の企画の事ですね、今回は……」 …。 あ…たしかにそれも聞きたいが今は…。 …。 「いや、もちろんそれもだが今聞きたいのは…」 「??」 …。 古泉が怪訝な表情を浮かべる。 俺は本題を口にした。 …。 「森さんって一体何歳なんだ?」 …。 その質問を口にしたその瞬間 …。 !? …。 俺は古泉に掴まれ物陰に引っ張り込まれた。 抗議の声を上げようと古泉の方を見るといつものスマイルでは無い必死な表情をした古泉がいた……おお!レア顔! …。 「なんて恐ろしい事を聞くんですか!?」 「……おい、森さんの年齢を聞く事のどこが恐ろ……」 「声が大きいです!」 …。 古泉は囁くように小さな、それでいて迫力のある声で俺の言葉を遮る……しかた無い。俺も小声で…。 …。 「別に良いだろ?前から気になっていたんだ。見ようによっては同じぐらいにも見えるしだいぶ年上にも見えるし」 「……それはプライバシーの事ですから‥」 …。 もう一押しだな。 …。 「絶対言わないし責任は全て俺が取る!お前には絶対迷惑はかけない……頼む」 …。 古泉は暫く沈黙した後 …。 「……絶対に内緒ですよ」 「ああ、約束する……で?」 …。 古泉はキョロキョロと辺りを見回した後、耳元に口を寄せ …。 「……森さんはですね…ああ見えて実は」 …。 実は? …。 「にじゅう……」 …。 古泉がそこまで言いかけた時だった。 …。 …。 ガッ!! …。 …。 俺の目に写ったのは……古泉の頭部に飛び蹴りを喰らわせているメイド服の姿だった…。 メイド服はそのまま古泉の首を足で挟み捻りを加えながら古泉を頭から床に叩きつけた。 …。 …。 ビクン …。 …。 …。 古泉は小さく体を震わせた後……動かなくなった…。 …。 メイド服……森さんは立ち上がり服の埃を払い …。 「あら!古泉君こんな所に倒れて……一体どうしたんですか!?」 …。 俺にそう言った。 …。 …。 ん?俺がなんて答えたかって?当然言ってやったさ!ビシッとな!! …。 「おそらく船酔いでしょう。ずっと我慢してたんでしょうね」 「まぁ!それは大変!?すぐにベッドで休ませますね♪」 森さんは古泉の足を掴み近くの部屋へと引きずっていった。 …。 ……ズー…ズー…ズー…ピタ …。 森さんは途中で振り返り …。 「あ、部屋は階段を登って三つ目の部屋ですから」 …。 笑顔でそう告げた。 …。 「はい、わかりました」 …。 俺も笑顔でそう返す。森さんは笑顔でさらに …。 「あなたはきっと長生きするタイプですね♪」 …。 と……俺も笑顔で …。 「はい、よく言われます」 …。 と返す。森さんはクスっと笑った後…別種の笑顔を浮かべ …。 「……好奇心は猫を殺すって言葉……知ってますよね?」 …。 その笑顔久しぶりだなぁ……朝比奈さん誘拐事件以来か。 …。 「はい、今後は肝に命じておきます」 …。 俺がそう言うといつもの笑顔に戻り…もう振り返る事無く部屋へと入って行った……古泉を引きずりながら…。 …。 俺はまた一つ学習したよ。 …。 人間本当に恐怖を感じた時は笑顔しか浮かべる事が出来ない …。 ってな。 …。 ……さて、部屋に向かうか。 ハルヒ達に古泉は船酔いで倒れたって伝えないとな。 …。 …。 ……まぁ……なんだ……古泉……すまん。 マジで…すまん。 …。 …。 …。 「船酔いだなんてね。そんな感じに見えなかったけど…」 …。 荷物を置いた俺達は談話室へと集まっていた。ハルヒが古泉の具合を森さんに訪ねている。 …。 「はい、どうやら過労に体調不良が重なったみたいですね。でもたいしたことないみたいですしすぐに回復するでしょう」 …。 森さんはにこやかに答えた。 かなり派手な音したからな……古泉の首……まぁ、古泉だから大丈夫だろう。 …。 ガチャ …。 ドアが開き …。 「古泉君!もう大丈夫なの?」 …。 古泉が入って来た。 …。 「どうもご心配をおかけしたみたいで……もう大丈夫です。ご心配をおかけしました」 …。 穏やかな笑顔を浮かべながら俺の隣に座る。 …。 「よ~し!これでみんな揃ったわね!それじゃあこれからの予定を話すわよ!」 …。 …。 …。 ハルヒが言う今後の予定。 今日はこのまま舘で遊び、島の探検は明日行うとの事だ。 ハルヒの事だからこれからすぐ島の探検に行く……と言い出すだろうと予想していたがハルヒはハルヒなりに古泉の体調を考えたらしい。もちろんそれに反対する理由は無いので俺達も了承する。 ……横目で古泉を見てみる……うん、笑顔だな。一応謝っておくか。 …。 「古泉」 …。 小声で古泉に切り出した。 古泉は なんでしょうか? って感じの笑顔を向ける。 …。 「まぁ……なんだ……すまなかったな…」 …。 古泉はニッコリと笑い …。 「いいえ、気にしないで下さい。たいした事ありませんでしたから」 …。 許してくれるのか?……古泉、お前本当に心の広い奴だな…。 …。 「本当にたいした事ありませんでしたよ…ええ…」 …。 ……え? …。 「恐ろしい質問をぶつけられ、頭部に強烈な一撃を喰らったうえに頭から床に叩きつけられた事なんて全然気にしていませんから」 …。 ……古泉? …。 「その後逆さ吊りにされて森さんお仕置きスペシャルのCコースを……僕個人としては ……Aコースで許してもらえるよね…? なんて甘い考えを持っていたんですけどね……まさかCコースだとは……。おっと、話がそれましたね。ええと…そうでしたCコースでしたね」 …。 横目で森さんを見る……森さんはハルヒの問いに穏やかな顔で答えている。 森さん…あなた一体古泉になにを…。 古泉は続ける …。 「そう、Cコースを一通り……詳細は避けます…あまりにも血生臭いので。それらが終わった後に …。 『森さんごめんなさい』 …。 を千回きっちりと言わされましたよ……まぁ、全然気にしてませんから。はははははっ…」 …。 …。 古泉……表情こそは笑顔だが目が全然笑っていない…。 …。 「気にしていませんから…ええ、全然気にしていませんから…」 …。 ……怒ってる…こいつ絶対怒ってる‥。 …。 …ん? …。 視線を感じ振り向くと …。 「……」 …。 長門が無言でこちらを見ていた。 …長門の事だから大体の事情はわかっているんだろうな…。 …。 「さぁて!ここでじっとしてるのもアレだし遊ぶわよ!」 …。 ハルヒの声が響く……遊ぶ? …。 …。 …。 「第二回SOS団卓球大会いいい!!!」 …。 ハルヒはこぶしをブンブン振り回しながら宣言した。 …。 …。 ……卓球ねぇ。 …。 遊戯室に移動した俺達はハルヒの提案により卓球大会を行う事となった。 まぁ提案とは言ったがハルヒの提案=決定…ってのは今更説明するまでも無い訳で…。 しかし何故わざわざ無人島に来てまで卓球をせねばならんのだ? …。 「おいハルヒ、前回もそうだったがお前は無人島に来たら卓球せずにはいられないのか?」 …。 軽く抗議してみるが …。 「古泉君具合は大丈夫?なんなら見学でも構わないわよ」 …。 当然聞いちゃいねぇ。 …。 「いえ、もう具合は大丈夫なので参加させていただきます」 …。 古泉は笑顔でそう答える。 …。 「古泉、本当に大丈夫なのか?」 「ええ、問題ありません……まだ少し頭痛が残っていますけど…おっと、全然気にしていませんからね」 …。 ……全力で気にしているだろお前。 …。 「んなら全員参加って事で良いわね?」 …。 ハルヒが俺達を見回す。その時以外な所から手が挙がった。 …。 「……」 …。 無言で手を挙げているのは……長門だった。 そしてゆっくりと口を開く …。 「……私は辞退する」 …。 長門が辞退!? 長門は基本的にこういった事は言わない…たとえハルヒに「校門でビラ配りするわよ!」とバニーガールの衣装を渡されてもおそらくは文句の‘も’の字も言わず淡々と着替え無言でハルヒに付いて行く事だろう。 どうしたんだ長門? …。 「有希、どうしたの?体調でも悪いの?」 「……そう」 「ちょっと…大丈夫なの有希?」 「たいしたことは無い……少し身体がだるいだけ」 「あの~、長門さん。横になったほうが…」 「フルフル……平気。私は審判をする」 「……まぁ…有希がそこまで言うのなら…でもひどくなる様だったらすぐに言うのよ」 「コクン……了解した」 …。 長門を心配するハルヒ……この優しさを少しでも良いから俺にも向けてくれ。 それにしても長門…体調が悪い?宇宙人製有機ヒューマノイドである長門が体調不良とは…。 ……ん?待てよ!長門は 審判をする と言ったよなさっき…。 長門が自分から何かをする…なんて言うのは滅多に無い事だ。 長門を見る……特にいつもと変化は無い。 何か考えがあるのかも…まぁ、しばらく様子を見よう。 …。 …。 「それじゃ~組分け!」 …。 ハルヒが割り箸をつき出す。 長門は審判だ。 ……さて、俺の相手は…。 …。 …。 「朝比奈さん、お手柔らかにお願いします」 「古泉くん、こちらこそ」 …。 組分けが決まった。 …。 「一回戦からアンタとはね」 「ああ、どうやらそのようだな」 …。 初戦の組み合わせは朝比奈さん対古泉、俺対ハルヒだ。 …。 「絶対負けないからね!キョン!!」 「…へいへい」 …。 そんな気合い入れんでも、俺は勝つつもりはねえよ…適当にやって適当に負ける。 世界の為にもそれが良いんだろ? …。 …。 一回戦が始まった。 …。 「え~い~」 …。 朝比奈さんのポンコツサーブが炸裂した。 まぁ、単純に考えて勝つのは古泉だろうな。 去年の野球や卓球を見て明らかだ。 古泉が手を抜かなければだが…。 …。 俺がそんな事を考えていた時だった。 …。 …。 カツッ! …。 「…って!」 …。 何事かと思ったがなんて事は無い、ピンポン玉が俺の頭にぶつかったのだ。 …。 「おや!申し訳ありません。大丈夫ですか?」 …。 古泉?ああ、古泉の打った玉か。 …。 「ああ」 …。 これくらいで怒る程俺の心は狭くない。 古泉にはさっきの負い目もあるし…。 これでチャラだ……それはさすがに虫が良すぎるか…。 そんな事を考えていた時だ。 …。 カツッ! …。 再び俺に玉がぶつかった。 …。 「おや!申し訳ありません」 …。 古泉がスマイルで俺に言う……まぁ、こんな事もあるだろう。 念のために場所を変えるか。 しかし俺が移動したとたん …。 カツッ! …。 「おや!申し訳ありません」 …。 偶然……だよな? ……そうだ!偶然だ!二度ある事は三度あるって言うじゃないか。 …。 カツッ! …. 「おや!申し訳ありません」 …。 ……はい? …。 「……古泉」 「なんでしょうか?」 「偶然……だよな?」 「ええ、当然ですよ」…。 偶然だ…ああ、偶然だ。まさか狙っているなんて……。 …。 カツッ! …。 「おや、申し訳ありません」 …。 偶然だ。うん、偶然……それにしても偶然が続くなぁ~はははははっ………………ってんな訳あるかこの野郎!!明らかに狙っていやがる! さっきの復讐か!?みみっちい野郎だ!いつまでもグチグチと!! …。 古泉を見ると……なに笑ってんだこの野郎! …。 …。 結局この試合は古泉の勝利で終わった。 …。 …。 …。 「キョン!手加減しないからね!」 「……」 「な…何よキョン、恐い顔しちゃって…」 「……何でも無い…始めるぞ」 …。 俺とハルヒの試合が始まった。 じゃんけんで勝利した俺はサーブ権を手に入れた。狙う所?……わかっているだろ? 俺の狙う場所は! …。 カツッ! …。 「おっ!すまんな古泉」 「…いえ…お気になさらず…」 …。 以下…少し短縮させてもらう。 …。 カツッ! 「おっ!すまん古泉」 「…いえ、偶然ですから」 …。 カツッ! 「おっ!すまん古泉」「……偶然…ですよね?」 …。 カツッ! 「おっ!すまん古泉」 「………」 …。 無言か……こんな所で良いだろう、 ここでニッコリと微笑みかけてやる。 …。 「……!?」 …。 ははっ、コメカミがヒクヒクしてやがるな。 …。 なんてガキなふたりwwww しかしふと気付けばこいつら16とか17なんだよなーがきんちょめww 475 名前: 自衛官(樺太)[sage] 投稿日:2007/04/22(日) 22 52 42.38 ID 6lz64KWRO 「キョン!さっきから何やってんのよ!真面目にやりなさい!」 …。 みんなを見てみる。 俺と古泉の様子に気づいてないのはハルヒだけか……朝比奈さんはさっきから俺と古泉を見てガクガクブルブルしている。長門はジイッと俺と古泉を見ている。 さて、今の俺とハルヒの点差は……アウト連発でかなり開いているな。 だが! …。 「ハルヒ…」 「なによ?」 「すまんが……勝たせてもらうぞ!」 …。 俺は今度こそハルヒのコートに打ち込む。 …。 「…面白いじゃない…そうこなくっちゃ!」 …。 ハルヒはニヤリと笑う……が…すまんなハルヒ。 俺に今見えているのはお前じゃない。 …。 お前の! 後ろの! にやけ顔だ!! …。 待ってやがれよ古泉!!! …。 …。 …。 …。 ~ハルヒ~ …。 …。 …。 アタシ達SOS団は第二回SOS団卓球大会の真っ最中。 初戦は第一試合はみくるちゃんと古泉君との対戦だった。 古泉最初はアウト連発で もしかしてみくるちゃん勝利!? なんて少しだけ期待したんだけど結局は古泉君の勝ち。 まぁ、みくるちゃんだし仕方ないわね。 そして次はアタシとキョンとの対戦だった。 最初からキョンの様子は変だった。なんか恐い顔してると思ったらいきなりアウト連発! なにやってんのアンタ?やる気あんの?あんまりガッカリさせないでよ! …なぁ~んて思っていた訳! そしたらキョンってば急に …。 「ハルヒ、すまんが……勝たせてもらうぞ!」 …。 とか言い出したの。あのキョンがよ!我が目を疑ったわ!だってキョンの全身から 絶対に勝つ!! って意思が見えたんだもの! ええ、嬉しかったわ。だってキョンったらいつも適当でアタシと本気で勝負してくれた事なんてなかった。 だからアタシも全力で答えたわ。それが礼儀ってもんだからね。 アタシはこう見えて運動神経には自信がある。スポーツで負ける事なんてほとんどなかった。 だから負けるつもりなんか微塵も無かったわ。 当たり前よ!アタシは負ける事が大っ嫌いなんだから! でも結果は負け……キョンに負けちゃった。 しかもキョンの勝利宣言からストレート負け。今でも信じられないわ…このアタシがストレート負けよ! 当然悔しいし 今度は絶対に負けない! って思うんだけど……なんだか嬉しいって感覚もある。 それはキョンが初めてアタシに本気出してくれたからかな? まぁ良いわ、こうなったらキョン!絶対に優勝よ! アタシに勝ったからには優勝してもらわないと困るんだから! 負けたら死刑よ!! …。 …。 「あの~…涼宮さん?」 …。 ん? …。 「どうしたのみくるちゃん?」 …。 みくるちゃんの様子がおかしい……なんか怯えてるみたいな。 …。 「その~…キョンくんと古泉くん……何かあったんですか?」 「何かって?」 …。 みくるちゃんは何を言ってるんだろうか…キョンと古泉君がどうかしたの? …。 みくるちゃんはそっと二人を指さした。 二人を見てみると………。 …!? …。 「みくるちゃん……あの二人……何があったの?」 …。 アタシの視線の先……卓球台を挟んでキョンと古泉君の二人が今まで見たこと無いような顔で睨みあっていた。…。 「うぅ…わかりませぇ~ん、気づいたらあんなでした~」 …。 ……一体何なの? …。 「キョンくんも古泉くんも卓球の試合をする雰囲気じゃありませんよぉ」 「……ええ、まるで 今から殺し合いを始めます って雰囲気ね……有希!」 …。 アタシの呼びかけに有希はゆっくりと振り向く。 …。 「なに?」 「あの二人…何があったの?」 …。 アタシの問いに有希はしばらく沈黙した後、再び視線を二人に戻した。 …。 「ちょっと!有希!」 「……静かに」 …。 有希? …。 「……始まる」 …。 二人に視線を戻すと有希の言葉通り、睨みあっていた二人が口を開いた。 …。 …。 「……いつか…こんな日が来るんじゃないか…そう思っていました」 「ああ……俺もだ。お前とは一度本気で決着を付けねばならんと前々から思っていた」 「くくくっ…まさかその日が今日になるなんて…」 「ふふっ…そうだな…」 …。 !? …。 二人の会話を聞いてアタシは直感した。 …。 このままだと血が流れる …。 冗談じゃないわ!このSOS団で私闘なんて許さない! 殺伐なんて吉野家だけで十分よ! アタシは二人の前に飛び出した。 …。 「待ちなさい!」 …。 二人がアタシを見る。 …。 「一体何があったか知らないけどアタシの目の前での殴り合いなんて絶対に許さないわよ!」 「……」 「……」 …。 二人は無言でアタシを見つめている。 …。 「す‥涼宮さん、ファイトぉ~」 …。 みくるちゃん、応援ありがとう、アタシに任せておきなさい! …。 しかし二人の反応は…。 …。 「……ハルヒ、お前何言ってるんだ?」 「涼宮さん、何をおっしゃっているのか意味がわかりませんが…」 …。 ……あれ? …。 「えっ……だって今から殴り合いするんじゃ…」 「は?なんで殴り合いなんてしないといけないんだ?卓球大会だろ?」 「そうです、卓球ですよ」 …。 へ?……二人は呆れた顔でアタシを見ている。 ……もしかしてアタシ痛い子? …。 「涼宮さん、誤解させてしまった様ですね、申し訳ありません。でもご心配しているような事は起きませんのでご安心を」 「そうだぞハルヒ、俺と古泉は今から卓球をするだけだ。心配をするな」 …。 二人は穏やかな顔でアタシに言った。 有希を見るとコクンと頷いた。 …。 「ん~、ゴホン。どうやら早とちりしていたみたいねアタシは。 じゃあスポーツらしく最初は握手から始めなさい」 …。 アタシの言葉に二人は…。 「ああ」 「はい」 …。 と穏やかな顔で言った。 アタシはみくるちゃんと有希の所に戻る。 …。 「涼宮さん…私…誤解しちゃって……ごめんなさい!」 「……みくるちゃん、誰でも誤解するわよアレじゃ…さぁ、二人を応援しましょう」 「はい♪」 …。 キョンと古泉君は笑顔でお互いに手を伸ばした。 …しかし、握手をした瞬間二人の体が一瞬と震えた……何? …。 「ふふ……ふふふふふふ」 「はは……はははははは」 …。 二人が突然笑い始める……何…何なの? …。 …。 二人はしばらく笑い続け……そして二人の手が離れた。 …。 …。 ………な!? …。 ……いや…まさか…幻覚、そう、幻覚よ!……だって…そんな…。 …。 「しゅ…しゅじゅみやしゃん…」 …。 みくるちゃん? …。 「い…今の見ましたか?」 …。 ……みくるちゃんにも見えたのね……OK、幻覚なんかじゃ無い…ええ認めましょう。 …。 アタシとみくるちゃん…おそらく有希も見たもの。 二人の手の平に一つづつ【画鋲】が刺さっていた。 ……落ち着け!涼宮ハルヒ!そう、二人が今からするのは卓球なの!ほら、見てみなさい、二人共何事も無かったようにストレッチをしているじゃない。 そうよ!アタシが動揺してどうすんのよ! ……よし!もう大丈夫! …。 「じゃあじゃんけんね」 …。 ストレッチを止め二人は近づく。 二人が向き合った瞬間……再び遊戯室に張りつめた空気が流れる。 二人の真剣な顔……もうこの時点から二人の闘いは始まっているのだ。 …。 …。 「じゃあいくわよ、最初は…」 …。 場の緊張が一気に高まる。 …。 「グー!」 …。 二人は同時にチョキを出す。 …。 ……ああ!突っ込みたい!なんで最初はグーなのに二人共チョキを出すの? ……ええ、わかっているわよ。お互いの裏の裏を読み合った結果でしょ。 キョンは古泉君がパーを出すと予想してチョキを出した……しかし古泉君も同じ事を考えた。 だから二人共チョキ……この二人性格悪すぎるわ! でも突っ込まない……突っ込んだら負け! …。 「じゃ~んけ~ん!ポン!!」 …。 バッ!! …。 二人の出した手は……パーとチョキ。 キョンがパーで古泉君がチョキ…。 …。 「……ぐっ…」 …。 キョンがくぐもった声を発し膝をつく。そしてそれを見下ろす古泉君。 …。 キョンの様子……痛々しい……でもじゃんけんで負けただけでしょ?試合で勝てば良いのよ! …。 有希が口を開く。 …。 「古泉一樹、1ポイント」 …。 ええ!?……ちょっと待ってよ有希! …。 「有希!どういう事!?」 「先ほどの瞬間、彼と古泉一樹との間で高度な心理の読み合いがあり、結果古泉一樹が勝利した。1ポイントは当然」 …。 ……そんな…確かに高度な心理の読み合いはあったわよ…でもそれだからって…。 …。 「…彼がそれを認めている」 …。 キョンを見ると……有希の言葉に反論するでも無く…ただ…悔しがっていた。 ……そう…キョンが認めているのね…。 …。 「……涼宮さん‥」 …。 みくるちゃん? …。 「これから…一体どうなっちゃうんですかぁ~」 …。 みくるちゃんは目に涙を溜めて……不安なのね…団長のアタシがしっかりしないと! …。 「みくるちゃん…大丈夫よ!これは卓球の試合なんだから!…ね?」 「……そうですよね、卓球ですもんね?喧嘩している訳じゃ無いですもんね?」 「そうよみくるちゃん!大丈夫だから!」 「はい!」 …。 そう、これは卓球。 喧嘩なんかじゃ無い。 …。 …。 …。 長かった前哨戦が終わり、結果古泉君が1ポイント先取した。 これから二人の本当の闘いが始まる。 …。 …。 …。 遊戯室の空気は張りつめていた……もうここは遊戯室では無い。 吉野家以上に殺伐とした戦場なのだ。 アタシ、有希、みくるちゃんはこの殺伐とした戦場で対峙する二人を見ている。 …。 「残念ですが…」 …。 古泉君が口を開く。 …。 「あなたにサーブ権が移る事はありません」 …。 凄い自信……古泉君はアタシにストレートで勝ったキョンを見ているはず…なのに古泉君のこの自信は…何? …。 「御託は良いからさっさと始めるぞ」 …。 大丈夫…キョンは落ち着いている。挑発には乗ってない。 …。 古泉君は笑みを浮かべ後ろに下がる。 …。 「行きます」 …。 古泉君は助走をつけ飛び上がる…頂上付近で玉を宙に上がった玉に右手のラケットを叩きつける。 …。 「ふもっふ!!」 …。 謎の掛け声と共に打ち出された玉はキョンのコートに突き刺さ……え!? …。 「なっ!?」 …。 コートに突き刺さると思われた玉は急に浮き上がり軌道を変え……!?。 …。 ガッ! …。 キョンは吹き飛ばされ…。 ドカッ! …。 後ろの壁に叩きつけられた………嘘…。 …。 …。 戦場に沈黙が流れる…キョンはピクリとも動かない。古泉君はそれを穏やかな笑みを浮かべ見下ろす。 ……何?何が起こったの?コートに突き刺さるはずだった玉が軌道を変えキョンの顔面に…そしてキョンが吹き飛ばされた。 ……って…キョンが吹き飛ばされた!?セルロイド製の小さな玉が人を吹き飛ばす?……ありえない。 それに…これって…アウトよね? アタシは審判である有希を見る……有希は頷き言った。 …。 「古泉一樹、6ポイント」 「ええ!?」 …。 アタシとみくるちゃんの声がハモる。 …。 「ちょっと……有希、何それ?」 「古泉一樹の打った玉は正確に彼の顔面に突き刺さった……ダメージもかなりのもの…6ポイントが相応しい」 …。 ちょっと…だってこの試合は…。 …。 「…卓球なのよね?この試合って」 「卓球」 …。 有希は即答する……あれ?…なんかアタシの知ってる卓球とだいぶ違うような…。 …。 「キョンくん!」 …。 みくるちゃんがキョンに駆け寄ろとするが…。 …。 ガシッ …。 有希はみくるちゃんの腕を掴み阻止する。 …。 「駄目」 「長門さん…だってキョンくんが…」 …。 有希はスーっとキョンを指さし …。 「まだ終わっていない」 …。 キョンを見ると…ゆっくりと立ち上がろうとしていた。口の端から血を流した顔に笑みが浮かぶ……何その修羅の門的な笑み? …。 「…いきなり顔面狙いだとはな……」 「おや、あなたは僕に紳士的な行動を期待していたのですか?」 「……ふん、まさか…まぁ、おかげで目が覚めた」 …。 まだやるつもりなの!?もうフラフラじゃない! アタシは駆け出しそうになったが……必死に堪える。 キョンはそんなの望まない キョンはまだ勝利を諦めていない…ここはアタシの出る幕じゃないんだ。 …。 「さぁ、再開だ」 …。 キョンの言葉に古泉君は頷き …。 「セカンドレイド!」 …。 さっきとは違う動きと掛け声で玉にラケットを打ち込む。 打ち出された玉……ニュートンに喧嘩を売っているような不規則な動きでキョンに向かっていた。 …。 キョン! …。 キョンを見ると……目を瞑っている!?……そうか!この不規則な動きに惑わされない為に…。 でもこのままじゃ…。 …。 古泉君の打ち出した玉の軌道はキョンの顔面に狙いをつけた…正確に向かっていく…。 …。 駄目ッ! …。 その瞬間キョンは目を開け…。 …。 「うおおおお!!!」 …。 ラケットを両手で掴み眼前の玉に振り降ろした…これは大根斬り!? …。 ガコッ! …。 キョンの振り降ろしたラケットは向かって来た威力をそのままに古泉君へと弾き返した。 そして弾き返した玉は一直線に進み…。 …。 ガッ!……ドカッ! …。 古泉君の顔面に吸い込まれた玉は古泉君を吹き飛ばしその体を壁に叩きつけた。 …。 そして再び沈黙が流れた。 「クリティカルヒット、9ポイント」 …。 有希の声が沈黙を破る……もう突っ込まない。アタシは理解した。 これは卓球なのだ。 やっている二人と審判である有希が言うのならばこれは卓球。 ……そう納得するしかない。 …。 「古泉!まさかこれで終わりって事は無いよな!?」 …。 キョンの言葉に古泉君はゆっくりと立ち上がる。 …。 「当然ですよ」 …。 口の端から血を流し修羅の門的な笑みを浮かべる古泉君…そう、まだ…まだ終わらないのだ。 …。 …。 …。 ~X時間後~ …。 …。 ガッ…ドカッ…ギャ…ガキッ… …。 どれくらい時間がたったんだろう。 …。 ガッ…ドカッ…ギャ…ガキッ… …。 この二人はいつまで続けるのだろうか。 …。 ガッ…ドカッ…ギャ…ガキッ… …。 飛び散る鮮血をいつまで見ないといけないのだろう…。 二人は何度吹き飛ばされ何度立ち上がっのだろう……何で立ち上がるの?そのまま寝ていれば楽なのに…。 でも二人は立ち上がる…それが男である事の証明であるかのように……本当に男って馬鹿! 有希はいつの間にかポイントを数えるのを止めていた。理解しているのだ…この二人の闘いはポイントなんかでは勝敗を決めてはならない事に みくるちゃん……ずいぶん前からみくるちゃんは顔を手で覆って目の前の光景を見ないようにしている。 アタシも出来るならばそうしたい。こんな凄惨な光景は見たくない……でも駄目、アタシはSOS団団長涼宮ハルヒ…アタシは最後まで見届ける義務がある。 …。 目を背けてはならない。 …。 …。 …。 …。 ………またしばらく時間が流れた。 目の前の凄惨な光景に変化は無い……一部分だけを除いて。 …。 「みくるちゃん、目を開けて」 「ううぅ…嫌です…私は見たくありません」 「いいから目を開けなさい!そして二人の顔を見て!」 …。 みくるちゃんは恐る恐る目を開ける。 …。 「………あ!…二人の顔…」 …。 そう、二人の顔…あんなに怖かった顔が今では憑き物が落ちたかのように穏やかな顔になっていた。 …。 「……予想通り」 …。 有希? …。 「二人は闘いの中でお互いを認め合いお互いを理解し合えた。今の彼と古泉一樹の間に憎しみは無い」 …。 有希は …。 ほら、その証拠に …。 とでも言う様に二人を指さす。 …。 「あ!」 「キョンくん…古泉君…」 …。 今のアタシ達の目の前の光景。 …。 …。 「やるな、古泉」 「あなたこそ」 …。 二人はお互いの肩を叩き合いお互いの検討を讃え合っていた。 …。 「キョンも古泉君もあんな笑顔で…」 …。 今まで見たことの無いようなさわやかな笑顔……ほんの数時間前の姿からは想像できない笑顔だった。 …。 「しゅ…しゅじゅみやしゃん…」 …。 みくるちゃん…。 …。 「これが…これが男の友情ってやつなんでしゅね」 …。 みくるちゃんの顔は涙でクシャクシャだった。 こんな方法でしかわかり合えないなんで……男って馬鹿…本当に馬鹿なんだから! …。 ……でも、少しだけうらやましい。 …。 「さぁ、これで終わりね!もう闘う必要無いんだから!」 …。 そうでしょ?だってもうわかり合えたんだから……でも二人は。 …。 「まだだハルヒ」 「まだ終われませんよ」 …。 なんで?もうわかり合えたのになんで続ける必要があるの? …。 「勘違いするな…卓球でだ、正真正銘の卓球でな」 …。 え? …。 「古泉、1ポイント勝負だ。それで全て終わり、どうだ」 「良いですね」 …。 二人はそう言って位置に着く。 まるで今までの凄惨な闘いの幕を降ろすかのように。 …。 アタシは有希とみくるちゃんを見る。 有希もみくるちゃんも頷く……みくるちゃんは満面の笑顔で、有希はいつも通りだけど……心なしか…笑っているように見えた。 …。 「本当にサーブは僕で良いのですか?」 「ああ、じゃんけんはお前が勝ったからな」 …。 長く辛い闘いが遂に終わる…本当の卓球で。 さっきまで凶器でしかなかったラケットと玉が喜んでいるかのように見える。 …。 そう、もう血に染まる必要は無いんだよ。 …。 …。 「いきます!」 「来い!」 …。 二人にとって勝敗なんてどうでも良いだろう…終わる為の儀式、そしてこれからを始める為の儀式なのだ。 …。 そして…二人が動いた。。 …。 …。 「あああ!!手が滑ったああああ!!!」 …。 ガッ!! …。 …。 …。 二人同時に叫んだ絶叫……そのわずかに後に響く二つの衝突音…。 …。 「……」 「……」 「……」 …。 無言のアタシ達の目の前に写ったのは…。 …。 それぞれの投げたラケットを顔にめり込ませ、ゆっくりと崩れ落ちていく二人の姿だった。 …。。 …。 …。 …。 今までで一番重苦しい沈黙が流れた……倒れた二人はピクリとも動かない。 …。 「…狙っていたんですね……二人共‥」 「……そうみたいね」 …。 ……コメントしようがない。 …。 「…………かった」 …。 有希? …。 「……ここまでは予想出来なかった」 …。 …。 沈黙の中、有希の声が響く。 …。 「ダブルノックアウト……ドロー」 …。 …。 第二回SOS団卓球大会 第一試合 〇古泉一樹 ×朝比奈みくる 11‐5 …。 第二試合 〇キョン ×涼宮ハルヒ 11-4 …。 決勝戦 時間無制限ルール変則デスマッチ ●キョン ●古泉一樹 禁じ手F・R・A(フライング・ラケット・アタック)によるダブルノックアウトによりドロー …。 優勝者無し …。 …。 …。 ~あの二人~ …。 …。 …。 「……お湯が傷にしみるな」 「……しみますね」 「ところでなんでこんなに広いんだこの風呂は?」 「さぁ、設計者の趣味でしょうね」 「趣味ね……それにしても」 「なんですか?」 「……勝利を確信してたんだがまさかお前が俺と同じ事を考えていたとはな」 「僕も同じですよ……まさかあそこでラケットが飛んでくるとは思いませんでした…まさかあなたの性格があそこまで悪いとは」 「いやいや…性格の悪さでは俺はお前の足下にもおよばんよ」 「いえいえ…あなたもなかなかのものです」 「……古泉」 「なんでしょうか?」 「正直すまなかったな」 「いえ…僕の方こそ……この島に来てから少し僕はおかしいのです…」 「何をいまさら…世間一般的に見てお前はつねにおかしいぞ」 「……一体どの口が言ってるのか非常に興味がわくのですが………予感…ってやつですか?」 「予感?」 「はい…これから言う事はあくまで僕が感じた何の根拠も無い予感です…そこの所は忘れないで下さい」 「……言ってみろ」 「なにか…嫌な予感がするんです。今まで感じた事の無いくらい黒く、重い…」 「……そうか…お前がいつその予感を感じたのか当ててみせようか?」 「え?」 「船でこの島を見た瞬間だ…」 「……なぜそう思うのでしょうか?」 「……俺もまったく同じ予感を感じたからだ」 「……」 「それは予感なんてもんじゃ無く……確信の段階まで行ってるはずだ…違うか?」 「……おっしゃる通りです。なんの根拠も無いんですけどね」 「……長門は何か言っていなかったか?」 「いえ…特になにも」 「そうか……偶然だと思うか?」 「……思いたいですね…杞憂だと」 「ああ…」 「とりあえず注意だけはしておきましょう」 「……ああ、さてそろそろあがるか」 「そうですね」 …。 …。 …。 …。 続・孤島症候群~キョン~ 続・孤島症候群(裏)~古泉一樹~ …。 へ続く。 ここからはこれを読んだ僕が読んでその後を予想したものを書いていきます。もちろん作者には無断です。 申し訳ないと思いつつ適当ですが書いてみました。上の話と切り離して読んでかまいません。それではどうぞ。 その後俺らは風呂から出た。 「じゃあとりあえず長門のところに行ってみるか」 「そうですね。確認してみましょう」 そして長門の部屋にノックをしてみた。 「・・・誰?」 「俺と古泉だ、少し聞きたい事がある。開けてくれ」 ガチャ 何か少し雰囲気というか・・・まぁとにかく少し何かが違う気がした。 「単刀直入に聞こう、長門、俺と古泉に船で何かしなかったか?」 「・・・何、とは?」 「えーと、つまりですね・・・」 俺の代わりに古泉が答えた。 「僕たちに情報改変をしませんでしたか?何か今回のことは少しおかしい気がするのですが・・・」 長門は一瞬驚いた様にも見えたが 「・・・そんな事実はない」 とすぐに答えた。 「そうですか、ならば我々の勘違いでしたね。変な事を聞いてすいませんでした。」 「別にいい」 「では失礼しました。」 「じゃあ長門、また後でな」 「・・・」 ガチャ 「・・・・・・」 この沈黙は俺ら二人分だ。 「古泉、俺が思うに長門が少しおかしかった気がするんだが」 「やはりあなたも感じましたか。僕もです。」 「じゃああれは長門が俺らに何かしたの原因なのか?」 「でしょうね。それに長門さんが自ら審判に来たのもおかしいですね。」 「一体何が目的なんだ?」 「そうですね・・・おそらく男の友情でも観察したかったんじゃないですか?」 「長門がそんな事に興味があるとは思えないな。」 「実は長門さんがここ最近そういう類の本を読んでるんですよね。」 「・・・マジか?」 「えらくマジです。」 「まぁそうであるとしよう。それで古泉、もしかして俺が森さんの・・・」 といっていると古泉が遮った。 「あああああああああああああああ」 「どうした!?」 「いえ何でもありません。ちょっとだけ思い出しただけです。Cコースをね。」 古泉、目が笑ってないぞ。 「で、本題ですね。長門さんがそこから仕組んだっていう可能性も0ではありませんよね。」 「古泉、ちょっと長門に一泡吹かせたくないか?」 「何危険な事言ってるんですか?長門さんですよ?僕の二の舞になる気ですか?」 「大丈夫だって。長門もきっとわかってくれるって。いざという時は俺が何とかするから。」 「今回僕はそのセリフでどんな目にあったことか。」 「まぁそういうなって。」 「仮に僕がOkとしてあの長門さんにどういう手が通用するんですか?」 「古泉、今日の晩御飯は何だ?」 「何ですか唐突に?一応お答えしますとここ周辺の魚介類を使ったシーフードカレーの予定ですよ。」 「ちょうどいいな。」 「何をする気ですか?」 「ちょっと耳を貸せ」 そして俺は長門にとっては悪魔の計画を口にした 「後が怖い気もするんですが。まぁためしにやってみましょう。」 「じゃあ決まりだな。」 「ご飯まで時間がありますし1局どうです?」 といって古泉が見せたのは将棋板だった。 「まぁ暇だしやるか。」 そしておれが古泉に5連勝中の時に 「古泉君、ごはんまだ~?」 ハルヒやかましいボイスが聞こえてきた。 「私もおなかすきましたぁ~」 朝比奈さんかわいいです。 「こらキョン、鼻の下を伸ばさない。またみくるちゃんを見てたんでしょ?」 「そんなわけないだろ」 「どうだか。まぁいいわ」 「ところでハルヒたちはまだ風呂に入ってないのか?」 「私たちはご飯を食べた後入る事にしたから」 「そうかい」 ここで新川さんの登場 「おやおやちょうど全員集まってますな。ご飯ができました」 それを聞いたとたんハルヒは朝比奈さんを引きずってあっという間に見えなくなった。 「僕たちも行きましょう」 ~食堂~ 「いいにおいねぇ。シーフードカレーね」 「左様でございます。この近くで取れた新鮮な魚介類を使っております」 「新川さんありがとう」 「いえいえ。おいしいかどうかはわかりませんが。」 「新川さんが作ったんだもん。おいしいに決まってるわよ。じゃあ早く食べましょう」 ハルヒも元気だねぇと思いつつ俺は古泉を見る小さくうなずいた。 「それじゃあいただきます。」 「「いただきます」」 みんなが食べ始めようとした時、 「長門さん、ちょっとお話があるんでいいですか」 「・・・あとじゃだめ?」 長門ぉその言い方は反則だああ 「できれば今がいいのですが」 古泉よく堪えた。といってもあいつには関係ないか。 「・・・了承した」 「何よ古泉君。早く帰ってきなさいよ。冷めちゃうじゃない。」 「涼宮さんたちは先に食べてていいですよ」 「わかったわ。じゃあ早く帰ってくるのよ」 「了解しました、では長門さんいきましょう」 ここまでは計画通りだ。後は俺ががんばるだけだ。 「じゃあ俺も食べるか。」 そろそろ作戦の種を明かそうじゃないか。それは長門の好きだというカレー(俺談)を先に全部食べてしまおうという作戦だ。ただ真っ向勝負したって無理だからな。古泉には長門を連れ出してもらった。こうすれば恨まれるのも俺だけというわけだ。もちろん好き好んでなったわけじゃないぞ。なんせ古泉にじゃんけんで決めるか?と提案したら古泉が「何かまた頭が痛くなって来ました。誰かさんのせいでね」と顔は笑ってるけど目は笑ってないという怖い状況でこんな事を言われたらおれが引き受ける以外にに道があっただろうか?もしこのときに無理やりじゃんけんをさせると思った奴、俺と代わってやるからすぐに来い。 まぁそんなわけで今はカレーをかなり速いスピードで食べて残り半分になったところで・・・ 「おかわり!」 一瞬何が起こったのか理解できなかった。状況を整理しよう。今の声は誰のだ?朝比奈さんなわけないだろう。そんな事があったら俺はこれから海に飛び込んでくる。もちろんそんなわけはなく当たり前だが声の主はハルヒだった。 「涼宮さん、そんなに早く食べるとおなか壊しちゃいますよぉ」 朝比奈さんやさしすぎです。ハルヒなら牛1頭食べようと大丈夫ですし朝比奈さんに心配されれば俺は 鯨1匹だって食べられます。 「大丈夫よ。それにしてもおいしいわねぇ」 「ありがとうございます。そういわれると苦労した甲斐があります。」 新川さんも律儀に答える。 「ハルヒ、お前ならどんだけ食っても大丈夫だとは思うが腹8分目にしとけよ」 「わかったわよ。じゃああと7杯いけるわね」 正直俺は絶句したね。古泉に長門を連れ出してもらったがその必要はなかったんじゃないか? まぁ念のため俺もたくさん食べなくてはな。しかしこのカレーはホントにおいしいな。 そしてその後朝比奈さんはちびちび、俺とハルヒバクバクというありきたりだがこれ以上表現する言葉がないんじゃないか?という感じで食べている。そこ、ボキャブラリーが乏しいとか言っちゃいけません。 そして朝比奈さんがやっと1杯食べ終わってごちそうさまとかわいく言った後古泉たちが帰ってきた。 既にハルヒは7杯目俺は4杯目を食べている。 「ふぉいずみふんおふぁえり(古泉君帰り)」 「おいハルヒ、食べ終わってからしゃべれ」 「いいじゃないべつに、それでどんな話をしてたの?」 「ちょっとしたことです。帰るときに涼宮さんにだけお話しましょう」 「今じゃだめなの?」 「まぁいいじゃないですか。僕たちにご飯も食べさせてくれないんですか?」 「そっか、ゴメンね古泉君。その代わりちゃんと帰るときに話しなさいよ」 「了解です」 「それでは僕たちもいただきましょう、ねぇ長門さん?」 「古泉既に長門は席についてるぞ」 「・・・では僕もいただきましょう」 とまぁこんな感じで古泉が帰ってきたわけだ。かし何の話をしたんだろうな。後で聞いてみるか。 「「おかわり」」 おれとハルヒの声がハモった。 おい古泉そのにやけ面をやめろ。長門は食べるのに集中してるようだし朝比奈さんはいつもとは違う笑顔でこっちを見ている。そして古泉が 「仲がよろしいですねぇ」 なんて言ってきやがった。 ハルヒが顔を赤くして 「そ、そんなわけないでしょ。い、今のが初めてなんだから。勘違いしないでよね」 「そ、そうだぞ古泉。ただの偶然だ偶然」 「そういうことにしておきます」 古泉のやろぉ。あとで1発なぐってやる。 そしておかわりのカレーを食べていると 「おかわり」と小さい声がした。長門だ。おれが一番期待してたしてた言葉だ。まぁハルヒもあれだけ食べたしもうないだろうと思っていると。 「申し訳ございません。さっきので最後でした」 一瞬空気が凍った。絶対零度を下回った気がする(つっこむなよ) 「・・・そう」 長門ぉそんな悲しい目をしないでくれえ。そして俺を見つめるなぁ。 「あなたたちので最後だったのなら仕方がない」 ・・・俺の気のせいでなければ軽くこの言葉に殺気がこもってたと思う。さすがにやばいと思い 「な、長門、俺の食べかけでよければ食べるか?」 俺は冷や汗をかきながら長門にそう提案した。そしたら長門が少しうれしいそうな顔をして 「たべる」と言ってきた。 「ほらよ」 なんか長門に悪い事をしたなぁと思ってると古泉がおれを見ていた。朝比奈さんならともかくお前は気持ち悪いだけだから見つめるな。おれは古泉の視線を無視しお茶を飲んでると 「でもこれってキョン君と長門さんの間接キスですよね?」と笑顔で言ってきたのだ。 思いっきり吹いたよ。何をかって?お茶をおもいっきりな。これは漫画の世界だけだと思ってたよ。そして隣でハルヒもむせている。古泉が少し顔を引きつらせていたのはどうでもいい。 「キョン君と涼宮さん大丈夫ですかぁ~?」 何のんきな事言ってるんですか。あなたのせいですよ~。古泉はすでに目が死んでいたのは気にしないでおこう。 「み、み、みくるちゃん。な、何言ってるのよ。そんなわけないでしょ。」 朝比奈さ~ん、不思議そうな顔もかわいいですけど空気読んでくださ~い。 「ほえ?」 「と、特に問題はありませんよ。同じ仲間じゃないですか」 古泉が少し復活してなんとかハルヒをなだめようとした。それと森さんと新川さんが携帯で通話しているのは割愛させてもらおう。 「そ、そうよねぇ~仲間だもんねぇ~」 ハルヒもあせりつつ何か場が重くなった。朝比奈さ~んあなたのせいなのにオロオロしないでくださ~い。 長門は満足・・・はしてないとは思うがとりあえずごちそうさまをして俺らは部屋に戻り、ハルヒたちは風呂に行った。 去り際に「のぞくなよ」と軽く俺を脅してな。 さて古泉の部屋にでも行くかな。 「よぉ古泉調子はどうだ?」 「どうだ?じゃないですよ神経が磨り減りましたよ。あの後特大の閉鎖空間が発生したんですからね」 「まぁすまん、それでまぁ一応長門に復讐らしきものはできたかな?」 「あなたがあそこであげてしまわなければね」 「しょうがないだろ?あの状況下で無視して食べられるのはハルヒだけだと思うぞ?」 「そのうちお詫びとしてカレーパーティーでも開いてあげましょう」 「そうだな」 「まぁ長門さんも一応満足したみたいですし作戦は失敗ですけど、まぁ良しとしますか。やはり長門さんをだますのは心が痛みます」 「そうだな。でも長門はあれで満足したのか?明らかに足りなかったと思うぞ」 「さすがあなたです。」 「それはほめてるのか?」 「安心して下さい。けなしてます。」 「古泉、もしかして長門に少しやったけどまだおれのことをおこっているのか?」 「いえいえ全然。長門さんのせいですから仕方ありませんよ。だれも森さんの一撃を受けた後見捨てた事なんか全然気にしてませんから」 おーい目がわらってないぞ~。 「すまん」 「まぁいいでしょう。涼宮さんたちがお風呂を出るまでまで時間がありますし、今度はチェスなんていかがですか?」 「お前もよくやるな。まぁ受けてたとうじゃないか」 そしてコマを並べているといきなりぞっとした感覚におそわれた。 「おい古泉、今なんか感じなかったか?」 「何かありました?僕は別に感じませんでしたよ。」 「そうか・・・じゃあ気のせいってことにしておくか」 「そういうことにしておきましょう」 そして俺らはもどってチェスを始めた。この後に来る悪夢のことを知らずにね。 時間は少し前に戻りハルヒたちが風呂へ行きキョンが古泉と話しているとき。廊下には一つの影があった。それは長門有希。うかつにも着替えを部屋に忘れてとりに戻っていた時の事、廊下を歩いている途中に話し声が聞こえたので聞き耳をたてたといってもすこし呪文を唱えればいいだけだが。 そして聞き始めたら 「・・・・復讐らしきものはできたかな?」 「え?」長門は少し動揺した。復讐?ちょっと情報改変しただけで? 長門はそう思っていると 「あなたがあそこであげてしまわなければね」と聞こえてきた。 長門はそれ以降の会話が耳にはいらなかった。2人のせいでカレーを食べられなかったの? 長門にはエラーという名の憎しみが生まれてきた。 そして長門が中に入ろうとしたとき、後ろから 「長門さんどうしました?お風呂ではなかったんですか?」森さんだ。 「着替えをとりに来ただけ」と淡々と告げる。 「そうですか、ところで古泉の部屋の前で何をやってたんですか?」 「それは・・・」長門がどういえばいいか迷った時名案が浮かんだ。 「森園生、大事な話がある」 「私の質問と関係があるのでしょうか?」 「ある。」 「ではお聞きしましょう」 「実は彼らの話を少し聞いていた。ただその内容が・・・」 「内容がどうしたんです?」 「あなたの年齢にまつわる話」 「ほう」 森さんの笑顔に少し黒がまざった。 「具体的に言って欲しいですね?」 森さんは少し抑えてなるべく普通の口調で言った。 「たとえばあなたが 禁則事項 歳だとか、意外と若作りしているんですねとか言ってた。」 「ほう、私の年齢を知ってるのは機関のものだけですからね。あなたが知っているということはどうやら本当のことのようですね。」 森さんは着いたときにキョンに見せた顔の100倍はすごかった。しかし森さんは失念していた、長門が人の年齢を知ろうと思えばいつでもわかる事を。 「報告ありがとうございます。長門さんは先にお風呂に言っててくださいね」 森さんがすでに目は笑っていない笑顔で長門にいう。流石の長門も恐怖を抱いたらしい。 「りょ、了解した」 長門はすぐに立ち去った。 そしてキョン視点に戻る。 「おい古泉」 「ええ、わかってます。何でしょうこの感覚は」 そう俺らはさっきとは桁違いの殺気(しゃれじゃないぞ)を感じたのだ。古泉も感じたらしい。 「今度は廊下を確認しましょう」 「いえその必要はありませんよ」 「「も、森さん!?どうしたんですか?」」 「好奇心は猫を殺すって言葉知ってますよねぇ。」 「も、もちろん」 おいおいどういう状況だ?誰か説明してくれ。これは確実に死亡フラグだぞ 「それと古泉」 「は、はい」 「女の子の年齢をいうのはタブーですよねぇ?」 「も、もちろんです」 やばい何か森さんは勘違いをしている。 「じゃあ何で言ったんでしょう?」 もうすでに100人ぐらい殺せそうな笑顔になってる。マジ怖い。 「い、言ってませんよ。あんな事があった後に言うわけないじゃないですか?森さんは僕が言ってるのを聞いたんですか?」 「ええ、聞きましたよ。長門さんから」 「「え?」」 「長門が俺たちの会話を聞いてたんですか?」 「はい」 「古泉、もしかしてカレーがなくなったのは俺らのせいだってことがわかったんじゃないのか?それで森さんありもしない事を・・・」 「かもしれませんね。長門さんならば人の年齢を知るのも容易なはずですし。」 古泉の顔は既に笑ってなかった。 「聞いてますか?まぁいいでしょうこれから暫くしゃべれなくなるのですから少しぐらいは許しましょう」 「お、俺たちに何をするんですか?」 「そうですねぇ~。とりあえずお仕置きスペシャルDコースをしましょう」 「森さん誤解です。僕たちはそんな事を言ってません」 「問答無用です♪」 「「うああああああああああああああ」」 そして家中に悲鳴が響き渡った。 何があったのかは俺のボキャブラリーでは説明できない、想像に任せ。 「ごめんなさいもうしませんから」 「おねがいです助けてください。Cコースのが楽に見えてきた」 「そうですね。これで終わりにしましょう」 「「ありがとうございます、やっと帰れる。」」 「何を言ってるんですか?準備運動は終わりといったんですよ?」 「「え???」」 「じゃあこれからが本番です。お仕置きスペシャルXXコースにしましょう」 「それだけやめてくださあああああああい」 「古泉そんなに酷いのか?」 「そんなレベルではありません。森さんが過去に使った例は1回だけですが受けた人は今も昏睡状態です」 「おいおいおいおい、そんなにやばいのかよ。」 「森さんやめてくださああああああああああああああい」 「俺からもお願いです。本当にやめてくださああああい」 俺らの悲鳴もむなしく森さんはこう言った 「それ無理♪」 「「うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」」 「ねぇ有希、今悲鳴が聞こえなかった?」 「聞こえない、気のせい」 「そっか。まぁ不思議かと思ったんだけどなぁ。まぁあとでキョンたちに調べさせましょう」 「 いい気味」 さてあの時の事を俺の数少ないボキャブラリーでこう表現しよう。 朝倉ってすごいやさしかったんだなぁ。
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「それにしても晴れて良かったですね」 「ああ、そうだな」 …。 上を見上げれば青い空、周りを見渡すと青い海。春らしい暖かい風が甲板に立つ俺の顔を優しく撫でる。 …。 「ほんの数日前に雪が降ったとは思えませんね」 「……まったくだ‥」 …。 数日前に行われた悪夢を思い出す。春休み直前の休日、季節外れの大雪が俺達の街を襲った。 この雪に大喜びしたハルヒにより校庭で生徒会との雪合戦が行われたのだ。 己の全存在を賭けた総力戦となったその戦いは……ハルヒによる‘F・T・A’(フライング・タニグチ・アタック)の炸裂、それに伴う谷口の裏切り、暴走した二人の宇宙人による地球崩壊の危機、そして最後は……ん?後編はどうしたんだって?。 ああ…とある事情により無期限延期だ。 …勘違いしないでもらいたい……どうやってまとめたら良いかわからなくてなって、悩み、途方に暮れたあげく 「……無かった事に出来ないかな‥」 などと現実逃避を起こしつつ放置していた訳では無い……断じて無い。 ……いつしか後編が発表される時が来るだろう……多分な‥。 …。 …。 …。 「あの…」 「……」 「もしもし?」 「………ん?」 「どうされましたか、ボーッとして?」 …。 古泉が怪訝な表情を浮かべ俺を見ていた、 …。 「ああ、少し言い訳をな…」 「言い訳?」 「……こっちの話だ」 「そうですか、そろそろ到着しますよ」 …。 長い船旅もようやく終わりを遂げようとしていた。 …。 「キョン!古泉君!降りる準備をしなさい!」 …。 客室からハルヒの声が響く……声がデカイんだよ。 …。 「では行きますか」 「ああ」 …。 …。 今の状況を説明せねばならんな。俺達SOS団は多丸圭一さんの別荘へと向かっている。ちなみに去年の夏に行った場所とは別だ。 …。 …。 多丸さんがまた新しい別荘を建てたのですよ、そして是非とも僕らを招待したいと言われまして …。 ……以上、古泉の言葉である。 当然その誘いをハルヒが断る訳も無く、合宿と称してSOS団全員で向かっている訳だ。 無論これは表向きの理由で実際は古泉達機関によるハルヒの退屈を紛らわす為のイベントなのだ。 ……それにしてもわざわざ別荘まで建てるか普通…。 …。 …。 「お久しぶりです皆様方」 「ようこそいらっしゃいました」 …。 港に着いた俺達を出迎えてくれたのはおなじみの新川さん、森さん、前回と同じ完璧に執事、メイドに成りきっている……たいしたものだ。 …。 「それじゃ~しゅっぱ~つ!!」 …。 挨拶を済ませた俺達一行は前回と同じくクルーザーに乗り換え多丸圭一氏の待つ無人島へと向かった。 …。 「ねぇ古泉君、本当にその島に出るんでしょうね?」 「はい、僕はその様に聞いています。そうですよね、新川さん?」 「はい、私も影の様なものを見ました、あれは明らかに人外のものですな」 「本当!?さっそく詳しい話を聞かせてもらえるかしら!」 …。 …。 …おっと、説明していなかったな。今俺達が向かっている無人島はただの無人島では無い、いわく付きの無人島なのだ。 当時その島は島流しに使われていたという話らしい。 島流しとは江戸時代に行われていた刑罰の一つで罪を犯した罪人が島に閉じ込められるというものだ。 あまりにもの過酷な生活で刑期を終え再び本土に戻れる者はほんの一握りのみ。多くの者はその島で死を迎える事となる。 …まったく古泉達はとんでもない所に招待してくれたもんだ。喜んでいるのはハルヒくらいなもんだろう。朝比奈さんはずっと怯えているし、長門は……まぁ、いつも通りか…。 ちなみに妹が今回来ていないのはこれが原因である……ん?俺はどうかって?全くの無問題だ。俺は幽霊など信じていない‥…まだ出会ってないからな。 …。 「見えて来た!」 …。 はしゃぐハルヒの指さすその先に島があったここが? ………!? ……なんだ…この寒気は…。 …。 「……」 「キョンくん、どうしたの?」 …。 朝比奈さんが心配そうな表情を浮かべている。 …。 「……なんでもありませんよ朝比奈さん」 「そう?なんかキョンくん暗い顔してたから…」 …。 ……なんでも無いとは言ったが俺は強烈な予感を感じた…いや、確信と言っても良いだろう。 …。 ……何かが起きる……取り返しのつかない何かが…。 …。 …。 【続・孤島症候群】 …。 …。 「やぁ、遠い所良く来てくれたね」 「お世話になりま~す♪」 …。 島に着いた俺達を出迎えてくれたのは多丸圭一さん、裕さん兄弟だ。圭一さんが会社の社長で裕さんがその社員だ……まぁ表向きはな。 …。 「では部屋に案内いたしますので私に付いてきて下さい」 …。 森さんの言葉だ。 森さん……森さんって一体何歳なんだろうか?そしてその立場は? 以前から抱いていた疑問だ。俺はその疑問を古泉にぶつけてみる事にした。 …。 「古泉」 「はい?」 「聞きたい事があるのだが」 「なんでしょうか?」 「え~とだな……」 …。 さすがに本人の前ではな…。 そんな俺の様子に気付いたのか …。 「森さん、先に涼宮さん達を案内していただいてよろしいですか」 「はい」 …。 さすが古泉だ、空気が読める。 ハルヒ達が見えなくなってから古泉が切り出した。 …。 「聞きたいのは今回の企画の事ですね、今回は……」 …。 あ…たしかにそれも聞きたいが今は…。 …。 「いや、もちろんそれもだが今聞きたいのは…」 「??」 …。 古泉が怪訝な表情を浮かべる。 俺は本題を口にした。 …。 「森さんって一体何歳なんだ?」 …。 その質問を口にしたその瞬間 …。 !? …。 俺は古泉に掴まれ物陰に引っ張り込まれた。 抗議の声を上げようと古泉の方を見るといつものスマイルでは無い必死な表情をした古泉がいた……おお!レア顔! …。 「なんて恐ろしい事を聞くんですか!?」 「……おい、森さんの年齢を聞く事のどこが恐ろ……」 「声が大きいです!」 …。 古泉は囁くように小さな、それでいて迫力のある声で俺の言葉を遮る……しかた無い。俺も小声で…。 …。 「別に良いだろ?前から気になっていたんだ。見ようによっては同じぐらいにも見えるしだいぶ年上にも見えるし」 「……それはプライバシーの事ですから‥」 …。 もう一押しだな。 …。 「絶対言わないし責任は全て俺が取る!お前には絶対迷惑はかけない……頼む」 …。 古泉は暫く沈黙した後 …。 「……絶対に内緒ですよ」 「ああ、約束する……で?」 …。 古泉はキョロキョロと辺りを見回した後、耳元に口を寄せ …。 「……森さんはですね…ああ見えて実は」 …。 実は? …。 「にじゅう……」 …。 古泉がそこまで言いかけた時だった。 …。 …。 ガッ!! …。 …。 俺の目に写ったのは……古泉の頭部に飛び蹴りを喰らわせているメイド服の姿だった…。 メイド服はそのまま古泉の首を足で挟み捻りを加えながら古泉を頭から床に叩きつけた。 …。 …。 ビクン …。 …。 …。 古泉は小さく体を震わせた後……動かなくなった…。 …。 メイド服……森さんは立ち上がり服の埃を払い …。 「あら!古泉君こんな所に倒れて……一体どうしたんですか!?」 …。 俺にそう言った。 …。 …。 ん?俺がなんて答えたかって?当然言ってやったさ!ビシッとな!! …。 「おそらく船酔いでしょう。ずっと我慢してたんでしょうね」 「まぁ!それは大変!?すぐにベッドで休ませますね♪」 森さんは古泉の足を掴み近くの部屋へと引きずっていった。 …。 ……ズー…ズー…ズー…ピタ …。 森さんは途中で振り返り …。 「あ、部屋は階段を登って三つ目の部屋ですから」 …。 笑顔でそう告げた。 …。 「はい、わかりました」 …。 俺も笑顔でそう返す。森さんは笑顔でさらに …。 「あなたはきっと長生きするタイプですね♪」 …。 と……俺も笑顔で …。 「はい、よく言われます」 …。 と返す。森さんはクスっと笑った後…別種の笑顔を浮かべ …。 「……好奇心は猫を殺すって言葉……知ってますよね?」 …。 その笑顔久しぶりだなぁ……朝比奈さん誘拐事件以来か。 …。 「はい、今後は肝に命じておきます」 …。 俺がそう言うといつもの笑顔に戻り…もう振り返る事無く部屋へと入って行った……古泉を引きずりながら…。 …。 俺はまた一つ学習したよ。 …。 人間本当に恐怖を感じた時は笑顔しか浮かべる事が出来ない …。 ってな。 …。 ……さて、部屋に向かうか。 ハルヒ達に古泉は船酔いで倒れたって伝えないとな。 …。 …。 ……まぁ……なんだ……古泉……すまん。 マジで…すまん。 …。 …。 …。 「船酔いだなんてね。そんな感じに見えなかったけど…」 …。 荷物を置いた俺達は談話室へと集まっていた。ハルヒが古泉の具合を森さんに訪ねている。 …。 「はい、どうやら過労に体調不良が重なったみたいですね。でもたいしたことないみたいですしすぐに回復するでしょう」 …。 森さんはにこやかに答えた。 かなり派手な音したからな……古泉の首……まぁ、古泉だから大丈夫だろう。 …。 ガチャ …。 ドアが開き …。 「古泉君!もう大丈夫なの?」 …。 古泉が入って来た。 …。 「どうもご心配をおかけしたみたいで……もう大丈夫です。ご心配をおかけしました」 …。 穏やかな笑顔を浮かべながら俺の隣に座る。 …。 「よ~し!これでみんな揃ったわね!それじゃあこれからの予定を話すわよ!」 …。 …。 …。 ハルヒが言う今後の予定。 今日はこのまま舘で遊び、島の探検は明日行うとの事だ。 ハルヒの事だからこれからすぐ島の探検に行く……と言い出すだろうと予想していたがハルヒはハルヒなりに古泉の体調を考えたらしい。もちろんそれに反対する理由は無いので俺達も了承する。 ……横目で古泉を見てみる……うん、笑顔だな。一応謝っておくか。 …。 「古泉」 …。 小声で古泉に切り出した。 古泉は なんでしょうか? って感じの笑顔を向ける。 …。 「まぁ……なんだ……すまなかったな…」 …。 古泉はニッコリと笑い …。 「いいえ、気にしないで下さい。たいした事ありませんでしたから」 …。 許してくれるのか?……古泉、お前本当に心の広い奴だな…。 …。 「本当にたいした事ありませんでしたよ…ええ…」 …。 ……え? …。 「恐ろしい質問をぶつけられ、頭部に強烈な一撃を喰らったうえに頭から床に叩きつけられた事なんて全然気にしていませんから」 …。 ……古泉? …。 「その後逆さ吊りにされて森さんお仕置きスペシャルのCコースを……僕個人としては ……Aコースで許してもらえるよね…? なんて甘い考えを持っていたんですけどね……まさかCコースだとは……。おっと、話がそれましたね。ええと…そうでしたCコースでしたね」 …。 横目で森さんを見る……森さんはハルヒの問いに穏やかな顔で答えている。 森さん…あなた一体古泉になにを…。 古泉は続ける …。 「そう、Cコースを一通り……詳細は避けます…あまりにも血生臭いので。それらが終わった後に …。 『森さんごめんなさい』 …。 を千回きっちりと言わされましたよ……まぁ、全然気にしてませんから。はははははっ…」 …。 …。 古泉……表情こそは笑顔だが目が全然笑っていない…。 …。 「気にしていませんから…ええ、全然気にしていませんから…」 …。 ……怒ってる…こいつ絶対怒ってる‥。 …。 …ん? …。 視線を感じ振り向くと …。 「……」 …。 長門が無言でこちらを見ていた。 …長門の事だから大体の事情はわかっているんだろうな…。 …。 「さぁて!ここでじっとしてるのもアレだし遊ぶわよ!」 …。 ハルヒの声が響く……遊ぶ? …。 …。 …。 「第二回SOS団卓球大会いいい!!!」 …。 ハルヒはこぶしをブンブン振り回しながら宣言した。 …。 …。 ……卓球ねぇ。 …。 遊戯室に移動した俺達はハルヒの提案により卓球大会を行う事となった。 まぁ提案とは言ったがハルヒの提案=決定…ってのは今更説明するまでも無い訳で…。 しかし何故わざわざ無人島に来てまで卓球をせねばならんのだ? …。 「おいハルヒ、前回もそうだったがお前は無人島に来たら卓球せずにはいられないのか?」 …。 軽く抗議してみるが …。 「古泉君具合は大丈夫?なんなら見学でも構わないわよ」 …。 当然聞いちゃいねぇ。 …。 「いえ、もう具合は大丈夫なので参加させていただきます」 …。 古泉は笑顔でそう答える。 …。 「古泉、本当に大丈夫なのか?」 「ええ、問題ありません……まだ少し頭痛が残っていますけど…おっと、全然気にしていませんからね」 …。 ……全力で気にしているだろお前。 …。 「んなら全員参加って事で良いわね?」 …。 ハルヒが俺達を見回す。その時以外な所から手が挙がった。 …。 「……」 …。 無言で手を挙げているのは……長門だった。 そしてゆっくりと口を開く …。 「……私は辞退する」 …。 長門が辞退!? 長門は基本的にこういった事は言わない…たとえハルヒに「校門でビラ配りするわよ!」とバニーガールの衣装を渡されてもおそらくは文句の‘も’の字も言わず淡々と着替え無言でハルヒに付いて行く事だろう。 どうしたんだ長門? …。 「有希、どうしたの?体調でも悪いの?」 「……そう」 「ちょっと…大丈夫なの有希?」 「たいしたことは無い……少し身体がだるいだけ」 「あの~、長門さん。横になったほうが…」 「フルフル……平気。私は審判をする」 「……まぁ…有希がそこまで言うのなら…でもひどくなる様だったらすぐに言うのよ」 「コクン……了解した」 …。 長門を心配するハルヒ……この優しさを少しでも良いから俺にも向けてくれ。 それにしても長門…体調が悪い?宇宙人製有機ヒューマノイドである長門が体調不良とは…。 ……ん?待てよ!長門は 審判をする と言ったよなさっき…。 長門が自分から何かをする…なんて言うのは滅多に無い事だ。 長門を見る……特にいつもと変化は無い。 何か考えがあるのかも…まぁ、しばらく様子を見よう。 …。 …。 「それじゃ~組分け!」 …。 ハルヒが割り箸をつき出す。 長門は審判だ。 ……さて、俺の相手は…。 …。 …。 「朝比奈さん、お手柔らかにお願いします」 「古泉くん、こちらこそ」 …。 組分けが決まった。 …。 「一回戦からアンタとはね」 「ああ、どうやらそのようだな」 …。 初戦の組み合わせは朝比奈さん対古泉、俺対ハルヒだ。 …。 「絶対負けないからね!キョン!!」 「…へいへい」 …。 そんな気合い入れんでも、俺は勝つつもりはねえよ…適当にやって適当に負ける。 世界の為にもそれが良いんだろ? …。 …。 一回戦が始まった。 …。 「え~い~」 …。 朝比奈さんのポンコツサーブが炸裂した。 まぁ、単純に考えて勝つのは古泉だろうな。 去年の野球や卓球を見て明らかだ。 古泉が手を抜かなければだが…。 …。 俺がそんな事を考えていた時だった。 …。 …。 カツッ! …。 「…って!」 …。 何事かと思ったがなんて事は無い、ピンポン玉が俺の頭にぶつかったのだ。 …。 「おや!申し訳ありません。大丈夫ですか?」 …。 古泉?ああ、古泉の打った玉か。 …。 「ああ」 …。 これくらいで怒る程俺の心は狭くない。 古泉にはさっきの負い目もあるし…。 これでチャラだ……それはさすがに虫が良すぎるか…。 そんな事を考えていた時だ。 …。 カツッ! …。 再び俺に玉がぶつかった。 …。 「おや!申し訳ありません」 …。 古泉がスマイルで俺に言う……まぁ、こんな事もあるだろう。 念のために場所を変えるか。 しかし俺が移動したとたん …。 カツッ! …。 「おや!申し訳ありません」 …。 偶然……だよな? ……そうだ!偶然だ!二度ある事は三度あるって言うじゃないか。 …。 カツッ! …. 「おや!申し訳ありません」 …。 ……はい? …。 「……古泉」 「なんでしょうか?」 「偶然……だよな?」 「ええ、当然ですよ」…。 偶然だ…ああ、偶然だ。まさか狙っているなんて……。 …。 カツッ! …。 「おや、申し訳ありません」 …。 偶然だ。うん、偶然……それにしても偶然が続くなぁ~はははははっ………………ってんな訳あるかこの野郎!!明らかに狙っていやがる! さっきの復讐か!?みみっちい野郎だ!いつまでもグチグチと!! …。 古泉を見ると……なに笑ってんだこの野郎! …。 …。 結局この試合は古泉の勝利で終わった。 …。 …。 …。 「キョン!手加減しないからね!」 「……」 「な…何よキョン、恐い顔しちゃって…」 「……何でも無い…始めるぞ」 …。 俺とハルヒの試合が始まった。 じゃんけんで勝利した俺はサーブ権を手に入れた。狙う所?……わかっているだろ? 俺の狙う場所は! …。 カツッ! …。 「おっ!すまんな古泉」 「…いえ…お気になさらず…」 …。 以下…少し短縮させてもらう。 …。 カツッ! 「おっ!すまん古泉」 「…いえ、偶然ですから」 …。 カツッ! 「おっ!すまん古泉」「……偶然…ですよね?」 …。 カツッ! 「おっ!すまん古泉」 「………」 …。 無言か……こんな所で良いだろう、 ここでニッコリと微笑みかけてやる。 …。 「……!?」 …。 ははっ、コメカミがヒクヒクしてやがるな。 …。 なんてガキなふたりwwww しかしふと気付けばこいつら16とか17なんだよなーがきんちょめww 475 名前: 自衛官(樺太)[sage] 投稿日:2007/04/22(日) 22 52 42.38 ID 6lz64KWRO 「キョン!さっきから何やってんのよ!真面目にやりなさい!」 …。 みんなを見てみる。 俺と古泉の様子に気づいてないのはハルヒだけか……朝比奈さんはさっきから俺と古泉を見てガクガクブルブルしている。長門はジイッと俺と古泉を見ている。 さて、今の俺とハルヒの点差は……アウト連発でかなり開いているな。 だが! …。 「ハルヒ…」 「なによ?」 「すまんが……勝たせてもらうぞ!」 …。 俺は今度こそハルヒのコートに打ち込む。 …。 「…面白いじゃない…そうこなくっちゃ!」 …。 ハルヒはニヤリと笑う……が…すまんなハルヒ。 俺に今見えているのはお前じゃない。 …。 お前の! 後ろの! にやけ顔だ!! …。 待ってやがれよ古泉!!! …。 …。 …。 …。 ~ハルヒ~ …。 …。 …。 アタシ達SOS団は第二回SOS団卓球大会の真っ最中。 初戦は第一試合はみくるちゃんと古泉君との対戦だった。 古泉最初はアウト連発で もしかしてみくるちゃん勝利!? なんて少しだけ期待したんだけど結局は古泉君の勝ち。 まぁ、みくるちゃんだし仕方ないわね。 そして次はアタシとキョンとの対戦だった。 最初からキョンの様子は変だった。なんか恐い顔してると思ったらいきなりアウト連発! なにやってんのアンタ?やる気あんの?あんまりガッカリさせないでよ! …なぁ~んて思っていた訳! そしたらキョンってば急に …。 「ハルヒ、すまんが……勝たせてもらうぞ!」 …。 とか言い出したの。あのキョンがよ!我が目を疑ったわ!だってキョンの全身から 絶対に勝つ!! って意思が見えたんだもの! ええ、嬉しかったわ。だってキョンったらいつも適当でアタシと本気で勝負してくれた事なんてなかった。 だからアタシも全力で答えたわ。それが礼儀ってもんだからね。 アタシはこう見えて運動神経には自信がある。スポーツで負ける事なんてほとんどなかった。 だから負けるつもりなんか微塵も無かったわ。 当たり前よ!アタシは負ける事が大っ嫌いなんだから! でも結果は負け……キョンに負けちゃった。 しかもキョンの勝利宣言からストレート負け。今でも信じられないわ…このアタシがストレート負けよ! 当然悔しいし 今度は絶対に負けない! って思うんだけど……なんだか嬉しいって感覚もある。 それはキョンが初めてアタシに本気出してくれたからかな? まぁ良いわ、こうなったらキョン!絶対に優勝よ! アタシに勝ったからには優勝してもらわないと困るんだから! 負けたら死刑よ!! …。 …。 「あの~…涼宮さん?」 …。 ん? …。 「どうしたのみくるちゃん?」 …。 みくるちゃんの様子がおかしい……なんか怯えてるみたいな。 …。 「その~…キョンくんと古泉くん……何かあったんですか?」 「何かって?」 …。 みくるちゃんは何を言ってるんだろうか…キョンと古泉君がどうかしたの? …。 みくるちゃんはそっと二人を指さした。 二人を見てみると………。 …!? …。 「みくるちゃん……あの二人……何があったの?」 …。 アタシの視線の先……卓球台を挟んでキョンと古泉君の二人が今まで見たこと無いような顔で睨みあっていた。…。 「うぅ…わかりませぇ~ん、気づいたらあんなでした~」 …。 ……一体何なの? …。 「キョンくんも古泉くんも卓球の試合をする雰囲気じゃありませんよぉ」 「……ええ、まるで 今から殺し合いを始めます って雰囲気ね……有希!」 …。 アタシの呼びかけに有希はゆっくりと振り向く。 …。 「なに?」 「あの二人…何があったの?」 …。 アタシの問いに有希はしばらく沈黙した後、再び視線を二人に戻した。 …。 「ちょっと!有希!」 「……静かに」 …。 有希? …。 「……始まる」 …。 二人に視線を戻すと有希の言葉通り、睨みあっていた二人が口を開いた。 …。 …。 「……いつか…こんな日が来るんじゃないか…そう思っていました」 「ああ……俺もだ。お前とは一度本気で決着を付けねばならんと前々から思っていた」 「くくくっ…まさかその日が今日になるなんて…」 「ふふっ…そうだな…」 …。 !? …。 二人の会話を聞いてアタシは直感した。 …。 このままだと血が流れる …。 冗談じゃないわ!このSOS団で私闘なんて許さない! 殺伐なんて吉野家だけで十分よ! アタシは二人の前に飛び出した。 …。 「待ちなさい!」 …。 二人がアタシを見る。 …。 「一体何があったか知らないけどアタシの目の前での殴り合いなんて絶対に許さないわよ!」 「……」 「……」 …。 二人は無言でアタシを見つめている。 …。 「す‥涼宮さん、ファイトぉ~」 …。 みくるちゃん、応援ありがとう、アタシに任せておきなさい! …。 しかし二人の反応は…。 …。 「……ハルヒ、お前何言ってるんだ?」 「涼宮さん、何をおっしゃっているのか意味がわかりませんが…」 …。 ……あれ? …。 「えっ……だって今から殴り合いするんじゃ…」 「は?なんで殴り合いなんてしないといけないんだ?卓球大会だろ?」 「そうです、卓球ですよ」 …。 へ?……二人は呆れた顔でアタシを見ている。 ……もしかしてアタシ痛い子? …。 「涼宮さん、誤解させてしまった様ですね、申し訳ありません。でもご心配しているような事は起きませんのでご安心を」 「そうだぞハルヒ、俺と古泉は今から卓球をするだけだ。心配をするな」 …。 二人は穏やかな顔でアタシに言った。 有希を見るとコクンと頷いた。 …。 「ん~、ゴホン。どうやら早とちりしていたみたいねアタシは。 じゃあスポーツらしく最初は握手から始めなさい」 …。 アタシの言葉に二人は…。 「ああ」 「はい」 …。 と穏やかな顔で言った。 アタシはみくるちゃんと有希の所に戻る。 …。 「涼宮さん…私…誤解しちゃって……ごめんなさい!」 「……みくるちゃん、誰でも誤解するわよアレじゃ…さぁ、二人を応援しましょう」 「はい♪」 …。 キョンと古泉君は笑顔でお互いに手を伸ばした。 …しかし、握手をした瞬間二人の体が一瞬と震えた……何? …。 「ふふ……ふふふふふふ」 「はは……はははははは」 …。 二人が突然笑い始める……何…何なの? …。 …。 二人はしばらく笑い続け……そして二人の手が離れた。 …。 …。 ………な!? …。 ……いや…まさか…幻覚、そう、幻覚よ!……だって…そんな…。 …。 「しゅ…しゅじゅみやしゃん…」 …。 みくるちゃん? …。 「い…今の見ましたか?」 …。 ……みくるちゃんにも見えたのね……OK、幻覚なんかじゃ無い…ええ認めましょう。 …。 アタシとみくるちゃん…おそらく有希も見たもの。 二人の手の平に一つづつ【画鋲】が刺さっていた。 ……落ち着け!涼宮ハルヒ!そう、二人が今からするのは卓球なの!ほら、見てみなさい、二人共何事も無かったようにストレッチをしているじゃない。 そうよ!アタシが動揺してどうすんのよ! ……よし!もう大丈夫! …。 「じゃあじゃんけんね」 …。 ストレッチを止め二人は近づく。 二人が向き合った瞬間……再び遊戯室に張りつめた空気が流れる。 二人の真剣な顔……もうこの時点から二人の闘いは始まっているのだ。 …。 …。 「じゃあいくわよ、最初は…」 …。 場の緊張が一気に高まる。 …。 「グー!」 …。 二人は同時にチョキを出す。 …。 ……ああ!突っ込みたい!なんで最初はグーなのに二人共チョキを出すの? ……ええ、わかっているわよ。お互いの裏の裏を読み合った結果でしょ。 キョンは古泉君がパーを出すと予想してチョキを出した……しかし古泉君も同じ事を考えた。 だから二人共チョキ……この二人性格悪すぎるわ! でも突っ込まない……突っ込んだら負け! …。 「じゃ~んけ~ん!ポン!!」 …。 バッ!! …。 二人の出した手は……パーとチョキ。 キョンがパーで古泉君がチョキ…。 …。 「……ぐっ…」 …。 キョンがくぐもった声を発し膝をつく。そしてそれを見下ろす古泉君。 …。 キョンの様子……痛々しい……でもじゃんけんで負けただけでしょ?試合で勝てば良いのよ! …。 有希が口を開く。 …。 「古泉一樹、1ポイント」 …。 ええ!?……ちょっと待ってよ有希! …。 「有希!どういう事!?」 「先ほどの瞬間、彼と古泉一樹との間で高度な心理の読み合いがあり、結果古泉一樹が勝利した。1ポイントは当然」 …。 ……そんな…確かに高度な心理の読み合いはあったわよ…でもそれだからって…。 …。 「…彼がそれを認めている」 …。 キョンを見ると……有希の言葉に反論するでも無く…ただ…悔しがっていた。 ……そう…キョンが認めているのね…。 …。 「……涼宮さん‥」 …。 みくるちゃん? …。 「これから…一体どうなっちゃうんですかぁ~」 …。 みくるちゃんは目に涙を溜めて……不安なのね…団長のアタシがしっかりしないと! …。 「みくるちゃん…大丈夫よ!これは卓球の試合なんだから!…ね?」 「……そうですよね、卓球ですもんね?喧嘩している訳じゃ無いですもんね?」 「そうよみくるちゃん!大丈夫だから!」 「はい!」 …。 そう、これは卓球。 喧嘩なんかじゃ無い。 …。 …。 …。 長かった前哨戦が終わり、結果古泉君が1ポイント先取した。 これから二人の本当の闘いが始まる。 …。 …。 …。 遊戯室の空気は張りつめていた……もうここは遊戯室では無い。 吉野家以上に殺伐とした戦場なのだ。 アタシ、有希、みくるちゃんはこの殺伐とした戦場で対峙する二人を見ている。 …。 「残念ですが…」 …。 古泉君が口を開く。 …。 「あなたにサーブ権が移る事はありません」 …。 凄い自信……古泉君はアタシにストレートで勝ったキョンを見ているはず…なのに古泉君のこの自信は…何? …。 「御託は良いからさっさと始めるぞ」 …。 大丈夫…キョンは落ち着いている。挑発には乗ってない。 …。 古泉君は笑みを浮かべ後ろに下がる。 …。 「行きます」 …。 古泉君は助走をつけ飛び上がる…頂上付近で玉を宙に上がった玉に右手のラケットを叩きつける。 …。 「ふもっふ!!」 …。 謎の掛け声と共に打ち出された玉はキョンのコートに突き刺さ……え!? …。 「なっ!?」 …。 コートに突き刺さると思われた玉は急に浮き上がり軌道を変え……!?。 …。 ガッ! …。 キョンは吹き飛ばされ…。 ドカッ! …。 後ろの壁に叩きつけられた………嘘…。 …。 …。 戦場に沈黙が流れる…キョンはピクリとも動かない。古泉君はそれを穏やかな笑みを浮かべ見下ろす。 ……何?何が起こったの?コートに突き刺さるはずだった玉が軌道を変えキョンの顔面に…そしてキョンが吹き飛ばされた。 ……って…キョンが吹き飛ばされた!?セルロイド製の小さな玉が人を吹き飛ばす?……ありえない。 それに…これって…アウトよね? アタシは審判である有希を見る……有希は頷き言った。 …。 「古泉一樹、6ポイント」 「ええ!?」 …。 アタシとみくるちゃんの声がハモる。 …。 「ちょっと……有希、何それ?」 「古泉一樹の打った玉は正確に彼の顔面に突き刺さった……ダメージもかなりのもの…6ポイントが相応しい」 …。 ちょっと…だってこの試合は…。 …。 「…卓球なのよね?この試合って」 「卓球」 …。 有希は即答する……あれ?…なんかアタシの知ってる卓球とだいぶ違うような…。 …。 「キョンくん!」 …。 みくるちゃんがキョンに駆け寄ろとするが…。 …。 ガシッ …。 有希はみくるちゃんの腕を掴み阻止する。 …。 「駄目」 「長門さん…だってキョンくんが…」 …。 有希はスーっとキョンを指さし …。 「まだ終わっていない」 …。 キョンを見ると…ゆっくりと立ち上がろうとしていた。口の端から血を流した顔に笑みが浮かぶ……何その修羅の門的な笑み? …。 「…いきなり顔面狙いだとはな……」 「おや、あなたは僕に紳士的な行動を期待していたのですか?」 「……ふん、まさか…まぁ、おかげで目が覚めた」 …。 まだやるつもりなの!?もうフラフラじゃない! アタシは駆け出しそうになったが……必死に堪える。 キョンはそんなの望まない キョンはまだ勝利を諦めていない…ここはアタシの出る幕じゃないんだ。 …。 「さぁ、再開だ」 …。 キョンの言葉に古泉君は頷き …。 「セカンドレイド!」 …。 さっきとは違う動きと掛け声で玉にラケットを打ち込む。 打ち出された玉……ニュートンに喧嘩を売っているような不規則な動きでキョンに向かっていた。 …。 キョン! …。 キョンを見ると……目を瞑っている!?……そうか!この不規則な動きに惑わされない為に…。 でもこのままじゃ…。 …。 古泉君の打ち出した玉の軌道はキョンの顔面に狙いをつけた…正確に向かっていく…。 …。 駄目ッ! …。 その瞬間キョンは目を開け…。 …。 「うおおおお!!!」 …。 ラケットを両手で掴み眼前の玉に振り降ろした…これは大根斬り!? …。 ガコッ! …。 キョンの振り降ろしたラケットは向かって来た威力をそのままに古泉君へと弾き返した。 そして弾き返した玉は一直線に進み…。 …。 ガッ!……ドカッ! …。 古泉君の顔面に吸い込まれた玉は古泉君を吹き飛ばしその体を壁に叩きつけた。 …。 そして再び沈黙が流れた。 「クリティカルヒット、9ポイント」 …。 有希の声が沈黙を破る……もう突っ込まない。アタシは理解した。 これは卓球なのだ。 やっている二人と審判である有希が言うのならばこれは卓球。 ……そう納得するしかない。 …。 「古泉!まさかこれで終わりって事は無いよな!?」 …。 キョンの言葉に古泉君はゆっくりと立ち上がる。 …。 「当然ですよ」 …。 口の端から血を流し修羅の門的な笑みを浮かべる古泉君…そう、まだ…まだ終わらないのだ。 …。 …。 …。 ~X時間後~ …。 …。 ガッ…ドカッ…ギャ…ガキッ… …。 どれくらい時間がたったんだろう。 …。 ガッ…ドカッ…ギャ…ガキッ… …。 この二人はいつまで続けるのだろうか。 …。 ガッ…ドカッ…ギャ…ガキッ… …。 飛び散る鮮血をいつまで見ないといけないのだろう…。 二人は何度吹き飛ばされ何度立ち上がっのだろう……何で立ち上がるの?そのまま寝ていれば楽なのに…。 でも二人は立ち上がる…それが男である事の証明であるかのように……本当に男って馬鹿! 有希はいつの間にかポイントを数えるのを止めていた。理解しているのだ…この二人の闘いはポイントなんかでは勝敗を決めてはならない事に みくるちゃん……ずいぶん前からみくるちゃんは顔を手で覆って目の前の光景を見ないようにしている。 アタシも出来るならばそうしたい。こんな凄惨な光景は見たくない……でも駄目、アタシはSOS団団長涼宮ハルヒ…アタシは最後まで見届ける義務がある。 …。 目を背けてはならない。 …。 …。 …。 …。 ………またしばらく時間が流れた。 目の前の凄惨な光景に変化は無い……一部分だけを除いて。 …。 「みくるちゃん、目を開けて」 「ううぅ…嫌です…私は見たくありません」 「いいから目を開けなさい!そして二人の顔を見て!」 …。 みくるちゃんは恐る恐る目を開ける。 …。 「………あ!…二人の顔…」 …。 そう、二人の顔…あんなに怖かった顔が今では憑き物が落ちたかのように穏やかな顔になっていた。 …。 「……予想通り」 …。 有希? …。 「二人は闘いの中でお互いを認め合いお互いを理解し合えた。今の彼と古泉一樹の間に憎しみは無い」 …。 有希は …。 ほら、その証拠に …。 とでも言う様に二人を指さす。 …。 「あ!」 「キョンくん…古泉君…」 …。 今のアタシ達の目の前の光景。 …。 …。 「やるな、古泉」 「あなたこそ」 …。 二人はお互いの肩を叩き合いお互いの検討を讃え合っていた。 …。 「キョンも古泉君もあんな笑顔で…」 …。 今まで見たことの無いようなさわやかな笑顔……ほんの数時間前の姿からは想像できない笑顔だった。 …。 「しゅ…しゅじゅみやしゃん…」 …。 みくるちゃん…。 …。 「これが…これが男の友情ってやつなんでしゅね」 …。 みくるちゃんの顔は涙でクシャクシャだった。 こんな方法でしかわかり合えないなんで……男って馬鹿…本当に馬鹿なんだから! …。 ……でも、少しだけうらやましい。 …。 「さぁ、これで終わりね!もう闘う必要無いんだから!」 …。 そうでしょ?だってもうわかり合えたんだから……でも二人は。 …。 「まだだハルヒ」 「まだ終われませんよ」 …。 なんで?もうわかり合えたのになんで続ける必要があるの? …。 「勘違いするな…卓球でだ、正真正銘の卓球でな」 …。 え? …。 「古泉、1ポイント勝負だ。それで全て終わり、どうだ」 「良いですね」 …。 二人はそう言って位置に着く。 まるで今までの凄惨な闘いの幕を降ろすかのように。 …。 アタシは有希とみくるちゃんを見る。 有希もみくるちゃんも頷く……みくるちゃんは満面の笑顔で、有希はいつも通りだけど……心なしか…笑っているように見えた。 …。 「本当にサーブは僕で良いのですか?」 「ああ、じゃんけんはお前が勝ったからな」 …。 長く辛い闘いが遂に終わる…本当の卓球で。 さっきまで凶器でしかなかったラケットと玉が喜んでいるかのように見える。 …。 そう、もう血に染まる必要は無いんだよ。 …。 …。 「いきます!」 「来い!」 …。 二人にとって勝敗なんてどうでも良いだろう…終わる為の儀式、そしてこれからを始める為の儀式なのだ。 …。 そして…二人が動いた。。 …。 …。 「あああ!!手が滑ったああああ!!!」 …。 ガッ!! …。 …。 …。 二人同時に叫んだ絶叫……そのわずかに後に響く二つの衝突音…。 …。 「……」 「……」 「……」 …。 無言のアタシ達の目の前に写ったのは…。 …。 それぞれの投げたラケットを顔にめり込ませ、ゆっくりと崩れ落ちていく二人の姿だった。 …。。 …。 …。 …。 今までで一番重苦しい沈黙が流れた……倒れた二人はピクリとも動かない。 …。 「…狙っていたんですね……二人共‥」 「……そうみたいね」 …。 ……コメントしようがない。 …。 「…………かった」 …。 有希? …。 「……ここまでは予想出来なかった」 …。 …。 沈黙の中、有希の声が響く。 …。 「ダブルノックアウト……ドロー」 …。 …。 第二回SOS団卓球大会 第一試合 〇古泉一樹 ×朝比奈みくる 11‐5 …。 第二試合 〇キョン ×涼宮ハルヒ 11-4 …。 決勝戦 時間無制限ルール変則デスマッチ ●キョン ●古泉一樹 禁じ手F・R・A(フライング・ラケット・アタック)によるダブルノックアウトによりドロー …。 優勝者無し …。 …。 …。 ~あの二人~ …。 …。 …。 「……お湯が傷にしみるな」 「……しみますね」 「ところでなんでこんなに広いんだこの風呂は?」 「さぁ、設計者の趣味でしょうね」 「趣味ね……それにしても」 「なんですか?」 「……勝利を確信してたんだがまさかお前が俺と同じ事を考えていたとはな」 「僕も同じですよ……まさかあそこでラケットが飛んでくるとは思いませんでした…まさかあなたの性格があそこまで悪いとは」 「いやいや…性格の悪さでは俺はお前の足下にもおよばんよ」 「いえいえ…あなたもなかなかのものです」 「……古泉」 「なんでしょうか?」 「正直すまなかったな」 「いえ…僕の方こそ……この島に来てから少し僕はおかしいのです…」 「何をいまさら…世間一般的に見てお前はつねにおかしいぞ」 「……一体どの口が言ってるのか非常に興味がわくのですが………予感…ってやつですか?」 「予感?」 「はい…これから言う事はあくまで僕が感じた何の根拠も無い予感です…そこの所は忘れないで下さい」 「……言ってみろ」 「なにか…嫌な予感がするんです。今まで感じた事の無いくらい黒く、重い…」 「……そうか…お前がいつその予感を感じたのか当ててみせようか?」 「え?」 「船でこの島を見た瞬間だ…」 「……なぜそう思うのでしょうか?」 「……俺もまったく同じ予感を感じたからだ」 「……」 「それは予感なんてもんじゃ無く……確信の段階まで行ってるはずだ…違うか?」 「……おっしゃる通りです。なんの根拠も無いんですけどね」 「……長門は何か言っていなかったか?」 「いえ…特になにも」 「そうか……偶然だと思うか?」 「……思いたいですね…杞憂だと」 「ああ…」 「とりあえず注意だけはしておきましょう」 「……ああ、さてそろそろあがるか」 「そうですね」 …。 …。 …。 …。 続・孤島症候群~キョン~ 続・孤島症候群(裏)~古泉一樹~ …。 へ続く。 ここからはこれを読んだ僕が読んでその後を予想したものを書いていきます。もちろん作者には無断です。 申し訳ないと思いつつ適当ですが書いてみました。上の話と切り離して読んでかまいません。それではどうぞ。 その後俺らは風呂から出た。 「じゃあとりあえず長門のところに行ってみるか」 「そうですね。確認してみましょう」 そして長門の部屋にノックをしてみた。 「・・・誰?」 「俺と古泉だ、少し聞きたい事がある。開けてくれ」 ガチャ 何か少し雰囲気というか・・・まぁとにかく少し何かが違う気がした。 「単刀直入に聞こう、長門、俺と古泉に船で何かしなかったか?」 「・・・何、とは?」 「えーと、つまりですね・・・」 俺の代わりに古泉が答えた。 「僕たちに情報改変をしませんでしたか?何か今回のことは少しおかしい気がするのですが・・・」 長門は一瞬驚いた様にも見えたが 「・・・そんな事実はない」 とすぐに答えた。 「そうですか、ならば我々の勘違いでしたね。変な事を聞いてすいませんでした。」 「別にいい」 「では失礼しました。」 「じゃあ長門、また後でな」 「・・・」 ガチャ 「・・・・・・」 この沈黙は俺ら二人分だ。 「古泉、俺が思うに長門が少しおかしかった気がするんだが」 「やはりあなたも感じましたか。僕もです。」 「じゃああれは長門が俺らに何かしたの原因なのか?」 「でしょうね。それに長門さんが自ら審判に来たのもおかしいですね。」 「一体何が目的なんだ?」 「そうですね・・・おそらく男の友情でも観察したかったんじゃないですか?」 「長門がそんな事に興味があるとは思えないな。」 「実は長門さんがここ最近そういう類の本を読んでるんですよね。」 「・・・マジか?」 「えらくマジです。」 「まぁそうであるとしよう。それで古泉、もしかして俺が森さんの・・・」 といっていると古泉が遮った。 「あああああああああああああああ」 「どうした!?」 「いえ何でもありません。ちょっとだけ思い出しただけです。Cコースをね。」 古泉、目が笑ってないぞ。 「で、本題ですね。長門さんがそこから仕組んだっていう可能性も0ではありませんよね。」 「古泉、ちょっと長門に一泡吹かせたくないか?」 「何危険な事言ってるんですか?長門さんですよ?僕の二の舞になる気ですか?」 「大丈夫だって。長門もきっとわかってくれるって。いざという時は俺が何とかするから。」 「今回僕はそのセリフでどんな目にあったことか。」 「まぁそういうなって。」 「仮に僕がOkとしてあの長門さんにどういう手が通用するんですか?」 「古泉、今日の晩御飯は何だ?」 「何ですか唐突に?一応お答えしますとここ周辺の魚介類を使ったシーフードカレーの予定ですよ。」 「ちょうどいいな。」 「何をする気ですか?」 「ちょっと耳を貸せ」 そして俺は長門にとっては悪魔の計画を口にした 「後が怖い気もするんですが。まぁためしにやってみましょう。」 「じゃあ決まりだな。」 「ご飯まで時間がありますし1局どうです?」 といって古泉が見せたのは将棋板だった。 「まぁ暇だしやるか。」 そしておれが古泉に5連勝中の時に 「古泉君、ごはんまだ~?」 ハルヒやかましいボイスが聞こえてきた。 「私もおなかすきましたぁ~」 朝比奈さんかわいいです。 「こらキョン、鼻の下を伸ばさない。またみくるちゃんを見てたんでしょ?」 「そんなわけないだろ」 「どうだか。まぁいいわ」 「ところでハルヒたちはまだ風呂に入ってないのか?」 「私たちはご飯を食べた後入る事にしたから」 「そうかい」 ここで新川さんの登場 「おやおやちょうど全員集まってますな。ご飯ができました」 それを聞いたとたんハルヒは朝比奈さんを引きずってあっという間に見えなくなった。 「僕たちも行きましょう」 ~食堂~ 「いいにおいねぇ。シーフードカレーね」 「左様でございます。この近くで取れた新鮮な魚介類を使っております」 「新川さんありがとう」 「いえいえ。おいしいかどうかはわかりませんが。」 「新川さんが作ったんだもん。おいしいに決まってるわよ。じゃあ早く食べましょう」 ハルヒも元気だねぇと思いつつ俺は古泉を見る小さくうなずいた。 「それじゃあいただきます。」 「「いただきます」」 みんなが食べ始めようとした時、 「長門さん、ちょっとお話があるんでいいですか」 「・・・あとじゃだめ?」 長門ぉその言い方は反則だああ 「できれば今がいいのですが」 古泉よく堪えた。といってもあいつには関係ないか。 「・・・了承した」 「何よ古泉君。早く帰ってきなさいよ。冷めちゃうじゃない。」 「涼宮さんたちは先に食べてていいですよ」 「わかったわ。じゃあ早く帰ってくるのよ」 「了解しました、では長門さんいきましょう」 ここまでは計画通りだ。後は俺ががんばるだけだ。 「じゃあ俺も食べるか。」 そろそろ作戦の種を明かそうじゃないか。それは長門の好きだというカレー(俺談)を先に全部食べてしまおうという作戦だ。ただ真っ向勝負したって無理だからな。古泉には長門を連れ出してもらった。こうすれば恨まれるのも俺だけというわけだ。もちろん好き好んでなったわけじゃないぞ。なんせ古泉にじゃんけんで決めるか?と提案したら古泉が「何かまた頭が痛くなって来ました。誰かさんのせいでね」と顔は笑ってるけど目は笑ってないという怖い状況でこんな事を言われたらおれが引き受ける以外にに道があっただろうか?もしこのときに無理やりじゃんけんをさせると思った奴、俺と代わってやるからすぐに来い。 まぁそんなわけで今はカレーをかなり速いスピードで食べて残り半分になったところで・・・ 「おかわり!」 一瞬何が起こったのか理解できなかった。状況を整理しよう。今の声は誰のだ?朝比奈さんなわけないだろう。そんな事があったら俺はこれから海に飛び込んでくる。もちろんそんなわけはなく当たり前だが声の主はハルヒだった。 「涼宮さん、そんなに早く食べるとおなか壊しちゃいますよぉ」 朝比奈さんやさしすぎです。ハルヒなら牛1頭食べようと大丈夫ですし朝比奈さんに心配されれば俺は 鯨1匹だって食べられます。 「大丈夫よ。それにしてもおいしいわねぇ」 「ありがとうございます。そういわれると苦労した甲斐があります。」 新川さんも律儀に答える。 「ハルヒ、お前ならどんだけ食っても大丈夫だとは思うが腹8分目にしとけよ」 「わかったわよ。じゃああと7杯いけるわね」 正直俺は絶句したね。古泉に長門を連れ出してもらったがその必要はなかったんじゃないか? まぁ念のため俺もたくさん食べなくてはな。しかしこのカレーはホントにおいしいな。 そしてその後朝比奈さんはちびちび、俺とハルヒバクバクというありきたりだがこれ以上表現する言葉がないんじゃないか?という感じで食べている。そこ、ボキャブラリーが乏しいとか言っちゃいけません。 そして朝比奈さんがやっと1杯食べ終わってごちそうさまとかわいく言った後古泉たちが帰ってきた。 既にハルヒは7杯目俺は4杯目を食べている。 「ふぉいずみふんおふぁえり(古泉君帰り)」 「おいハルヒ、食べ終わってからしゃべれ」 「いいじゃないべつに、それでどんな話をしてたの?」 「ちょっとしたことです。帰るときに涼宮さんにだけお話しましょう」 「今じゃだめなの?」 「まぁいいじゃないですか。僕たちにご飯も食べさせてくれないんですか?」 「そっか、ゴメンね古泉君。その代わりちゃんと帰るときに話しなさいよ」 「了解です」 「それでは僕たちもいただきましょう、ねぇ長門さん?」 「古泉既に長門は席についてるぞ」 「・・・では僕もいただきましょう」 とまぁこんな感じで古泉が帰ってきたわけだ。かし何の話をしたんだろうな。後で聞いてみるか。 「「おかわり」」 おれとハルヒの声がハモった。 おい古泉そのにやけ面をやめろ。長門は食べるのに集中してるようだし朝比奈さんはいつもとは違う笑顔でこっちを見ている。そして古泉が 「仲がよろしいですねぇ」 なんて言ってきやがった。 ハルヒが顔を赤くして 「そ、そんなわけないでしょ。い、今のが初めてなんだから。勘違いしないでよね」 「そ、そうだぞ古泉。ただの偶然だ偶然」 「そういうことにしておきます」 古泉のやろぉ。あとで1発なぐってやる。 そしておかわりのカレーを食べていると 「おかわり」と小さい声がした。長門だ。おれが一番期待してたしてた言葉だ。まぁハルヒもあれだけ食べたしもうないだろうと思っていると。 「申し訳ございません。さっきので最後でした」 一瞬空気が凍った。絶対零度を下回った気がする(つっこむなよ) 「・・・そう」 長門ぉそんな悲しい目をしないでくれえ。そして俺を見つめるなぁ。 「あなたたちので最後だったのなら仕方がない」 ・・・俺の気のせいでなければ軽くこの言葉に殺気がこもってたと思う。さすがにやばいと思い 「な、長門、俺の食べかけでよければ食べるか?」 俺は冷や汗をかきながら長門にそう提案した。そしたら長門が少しうれしいそうな顔をして 「たべる」と言ってきた。 「ほらよ」 なんか長門に悪い事をしたなぁと思ってると古泉がおれを見ていた。朝比奈さんならともかくお前は気持ち悪いだけだから見つめるな。おれは古泉の視線を無視しお茶を飲んでると 「でもこれってキョン君と長門さんの間接キスですよね?」と笑顔で言ってきたのだ。 思いっきり吹いたよ。何をかって?お茶をおもいっきりな。これは漫画の世界だけだと思ってたよ。そして隣でハルヒもむせている。古泉が少し顔を引きつらせていたのはどうでもいい。 「キョン君と涼宮さん大丈夫ですかぁ~?」 何のんきな事言ってるんですか。あなたのせいですよ~。古泉はすでに目が死んでいたのは気にしないでおこう。 「み、み、みくるちゃん。な、何言ってるのよ。そんなわけないでしょ。」 朝比奈さ~ん、不思議そうな顔もかわいいですけど空気読んでくださ~い。 「ほえ?」 「と、特に問題はありませんよ。同じ仲間じゃないですか」 古泉が少し復活してなんとかハルヒをなだめようとした。それと森さんと新川さんが携帯で通話しているのは割愛させてもらおう。 「そ、そうよねぇ~仲間だもんねぇ~」 ハルヒもあせりつつ何か場が重くなった。朝比奈さ~んあなたのせいなのにオロオロしないでくださ~い。 長門は満足・・・はしてないとは思うがとりあえずごちそうさまをして俺らは部屋に戻り、ハルヒたちは風呂に行った。 去り際に「のぞくなよ」と軽く俺を脅してな。 さて古泉の部屋にでも行くかな。 「よぉ古泉調子はどうだ?」 「どうだ?じゃないですよ神経が磨り減りましたよ。あの後特大の閉鎖空間が発生したんですからね」 「まぁすまん、それでまぁ一応長門に復讐らしきものはできたかな?」 「あなたがあそこであげてしまわなければね」 「しょうがないだろ?あの状況下で無視して食べられるのはハルヒだけだと思うぞ?」 「そのうちお詫びとしてカレーパーティーでも開いてあげましょう」 「そうだな」 「まぁ長門さんも一応満足したみたいですし作戦は失敗ですけど、まぁ良しとしますか。やはり長門さんをだますのは心が痛みます」 「そうだな。でも長門はあれで満足したのか?明らかに足りなかったと思うぞ」 「さすがあなたです。」 「それはほめてるのか?」 「安心して下さい。けなしてます。」 「古泉、もしかして長門に少しやったけどまだおれのことをおこっているのか?」 「いえいえ全然。長門さんのせいですから仕方ありませんよ。だれも森さんの一撃を受けた後見捨てた事なんか全然気にしてませんから」 おーい目がわらってないぞ~。 「すまん」 「まぁいいでしょう。涼宮さんたちがお風呂を出るまでまで時間がありますし、今度はチェスなんていかがですか?」 「お前もよくやるな。まぁ受けてたとうじゃないか」 そしてコマを並べているといきなりぞっとした感覚におそわれた。 「おい古泉、今なんか感じなかったか?」 「何かありました?僕は別に感じませんでしたよ。」 「そうか・・・じゃあ気のせいってことにしておくか」 「そういうことにしておきましょう」 そして俺らはもどってチェスを始めた。この後に来る悪夢のことを知らずにね。 時間は少し前に戻りハルヒたちが風呂へ行きキョンが古泉と話しているとき。廊下には一つの影があった。それは長門有希。うかつにも着替えを部屋に忘れてとりに戻っていた時の事、廊下を歩いている途中に話し声が聞こえたので聞き耳をたてたといってもすこし呪文を唱えればいいだけだが。 そして聞き始めたら 「・・・・復讐らしきものはできたかな?」 「え?」長門は少し動揺した。復讐?ちょっと情報改変しただけで? 長門はそう思っていると 「あなたがあそこであげてしまわなければね」と聞こえてきた。 長門はそれ以降の会話が耳にはいらなかった。2人のせいでカレーを食べられなかったの? 長門にはエラーという名の憎しみが生まれてきた。 そして長門が中に入ろうとしたとき、後ろから 「長門さんどうしました?お風呂ではなかったんですか?」森さんだ。 「着替えをとりに来ただけ」と淡々と告げる。 「そうですか、ところで古泉の部屋の前で何をやってたんですか?」 「それは・・・」長門がどういえばいいか迷った時名案が浮かんだ。 「森園生、大事な話がある」 「私の質問と関係があるのでしょうか?」 「ある。」 「ではお聞きしましょう」 「実は彼らの話を少し聞いていた。ただその内容が・・・」 「内容がどうしたんです?」 「あなたの年齢にまつわる話」 「ほう」 森さんの笑顔に少し黒がまざった。 「具体的に言って欲しいですね?」 森さんは少し抑えてなるべく普通の口調で言った。 「たとえばあなたが 禁則事項 歳だとか、意外と若作りしているんですねとか言ってた。」 「ほう、私の年齢を知ってるのは機関のものだけですからね。あなたが知っているということはどうやら本当のことのようですね。」 森さんは着いたときにキョンに見せた顔の100倍はすごかった。しかし森さんは失念していた、長門が人の年齢を知ろうと思えばいつでもわかる事を。 「報告ありがとうございます。長門さんは先にお風呂に言っててくださいね」 森さんがすでに目は笑っていない笑顔で長門にいう。流石の長門も恐怖を抱いたらしい。 「りょ、了解した」 長門はすぐに立ち去った。 そしてキョン視点に戻る。 「おい古泉」 「ええ、わかってます。何でしょうこの感覚は」 そう俺らはさっきとは桁違いの殺気(しゃれじゃないぞ)を感じたのだ。古泉も感じたらしい。 「今度は廊下を確認しましょう」 「いえその必要はありませんよ」 「「も、森さん!?どうしたんですか?」」 「好奇心は猫を殺すって言葉知ってますよねぇ。」 「も、もちろん」 おいおいどういう状況だ?誰か説明してくれ。これは確実に死亡フラグだぞ 「それと古泉」 「は、はい」 「女の子の年齢をいうのはタブーですよねぇ?」 「も、もちろんです」 やばい何か森さんは勘違いをしている。 「じゃあ何で言ったんでしょう?」 もうすでに100人ぐらい殺せそうな笑顔になってる。マジ怖い。 「い、言ってませんよ。あんな事があった後に言うわけないじゃないですか?森さんは僕が言ってるのを聞いたんですか?」 「ええ、聞きましたよ。長門さんから」 「「え?」」 「長門が俺たちの会話を聞いてたんですか?」 「はい」 「古泉、もしかしてカレーがなくなったのは俺らのせいだってことがわかったんじゃないのか?それで森さんありもしない事を・・・」 「かもしれませんね。長門さんならば人の年齢を知るのも容易なはずですし。」 古泉の顔は既に笑ってなかった。 「聞いてますか?まぁいいでしょうこれから暫くしゃべれなくなるのですから少しぐらいは許しましょう」 「お、俺たちに何をするんですか?」 「そうですねぇ~。とりあえずお仕置きスペシャルDコースをしましょう」 「森さん誤解です。僕たちはそんな事を言ってません」 「問答無用です♪」 「「うああああああああああああああ」」 そして家中に悲鳴が響き渡った。 何があったのかは俺のボキャブラリーでは説明できない、想像に任せ。 「ごめんなさいもうしませんから」 「おねがいです助けてください。Cコースのが楽に見えてきた」 「そうですね。これで終わりにしましょう」 「「ありがとうございます、やっと帰れる。」」 「何を言ってるんですか?準備運動は終わりといったんですよ?」 「「え???」」 「じゃあこれからが本番です。お仕置きスペシャルXXコースにしましょう」 「それだけやめてくださあああああああい」 「古泉そんなに酷いのか?」 「そんなレベルではありません。森さんが過去に使った例は1回だけですが受けた人は今も昏睡状態です」 「おいおいおいおい、そんなにやばいのかよ。」 「森さんやめてくださああああああああああああああい」 「俺からもお願いです。本当にやめてくださああああい」 俺らの悲鳴もむなしく森さんはこう言った 「それ無理♪」 「「うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」」 「ねぇ有希、今悲鳴が聞こえなかった?」 「聞こえない、気のせい」 「そっか。まぁ不思議かと思ったんだけどなぁ。まぁあとでキョンたちに調べさせましょう」 「 いい気味」 さてあの時の事を俺の数少ないボキャブラリーでこう表現しよう。 朝倉ってすごいやさしかったんだなぁ。
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時系列は7月~8月の間の夏休み。 涼宮ハルヒは、古泉一樹の提供で、夏休みにSOS団合宿をすることを決める。 孤島の無人島にその館は位置し、ハルヒの退屈を紛らわせるためにセッティング。 これにより、古泉は二階級あがって、SOS団副団長に進級する。 島についたSOS団一行は、臨時執事の新川、家政婦の森園生に出迎えられ、クルーザーに乗り、孤島を目指す。 孤島についたSOS団は館の主人多丸圭一、多丸裕と出会い、中に入る。 二日目の朝、天気はいきなり嵐になり館でハルヒらは、麻雀や、いろいろなテーブルゲームをプレイし、アルコールまで飲むほど遊んだ。 だが、館にきて三日目、圭一氏が何者かに殺害される事件が起きる。 結局は、すべて古泉らが仕組んだゲームで、圭一氏らは機関のメンバーだったハルヒの退屈を紛らわせるために考えたのだという。 これを機にハルヒは冬にも合宿をし、今度ははじめから殺人劇だということを明かして、余興をしてもらうと古泉に約束させた。
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鶴屋さんも妹もいなくなった、とうとうハルヒと二人だけになっちまった、 ────最悪の事態じゃねえか。 新・孤島症候群─誤解編─ 先に声を出したのはハルヒだった。 「こうなるかもしれないって思ってたけど、まさか本当になるなんて……、 でもどっかそこら辺に隠れてあたし達を驚かせようとしてるのかもしれないわ」 ハルヒは部屋の中を調べ始めた。ベッド下やらクローゼットの中を覗き込んだりしている。 俺はしばらく呆然とハルヒの行動を眺めていた。じわじわと思考が復活してくる。 とうとうみんな消えちまったてのか、古泉が言っていた最悪の事態じゃねえか、本当に俺とハルヒしか残ってないのか。 これならまだハルヒと二人で閉鎖空間をさまよっている方がいくらかましに思えるぞ、 あんときは朝比奈さん(大)や長門からヒントをもらえて脱出できたんだからな、だが、 今の状況ではなんのヒントももらってないし、相談する相手も消えちまったんだ、俺はいったいどうすりゃいい? もし、もしも、この状況に陥った原因がハルヒ関連だったとしてだ、 他の連中はそれぞれ特殊なプロフィールを持ってハルヒに関わっていたが、鶴屋さんと俺の妹は完全に部外者のはずだ。 俺? 俺は一応一般人だが無関係とは言いがたい、最初は巻き込まれただけだったが、今は自ら首を突っ込んでいるようなもんだ。 ある意味習慣とか習性とかそんなもんだと思う。それに楽しいと思っている自分がいることもたしかなんだ。 だから俺が巻き込まれても自業自得だ。 とは言っても無関係の人を巻き込んだからとして、それはハルヒが悪いんじゃない、 ハルヒは何も知らされていないんだ、そんな力を持っていることも、使い方も、なによりそんな巨大な力を持つ覚悟さえもだ、 そんなことは解っているんだ、解っているんだが……。 いや、まて、さっきハルヒはなんつった? “こうなるかもしれないって思ってた”だと。 じゃあ、鶴屋さんと妹が消えちまったのはハルヒがやったっていうのか、しかもそう思わせてしまったのは俺か、 俺ってことなのか。俺が有名なミステリーの模倣かもしれないなんていってしまったからこんなことに……? とは言えあの時はああでもいってハルヒの不安を解消させきゃと思って必至だったんだ、 でないとハルヒの不安が現実になっちまうかもしれないんだ。くそ、だったらどうすりゃよかったんだよ。 そのとき、自分の顔がどんな表情だったのか自分じゃわからなかった。近くに鏡がなかったからな。 だが、ハルヒには俺の表情が見えていたようで、 「キョン、あたし気付いたことがあるんだけど」 何やら真剣な表情でハルヒが俺を見ていた。 「なんだ? なにか解ったのか?」 「うん、まあね。でもここじゃ何だから廊下に出ましょ」 ハルヒはゆっくりとした足取りで部屋を出て行った。正直どこだっていいと思うんだが、俺は素直にそれにならう。 廊下に出ると、ハルヒは背中を向けたまま立っていた。 首をねじり、横目で俺が部屋から出てきたのをチラリと確認すると、またもやゆっくりと歩き出す。 「正直言うとね、ちょっと前から気にはなってたのよ」 なんだ? 何が解ったんだ、この事件の真相か? しかし、いくらなんでも古泉たちの仕組んだことだと思っているお前の推理じゃ、俺が納得できる答えは聞けそうもないんだが。 「そう、はっきり言ってさっきまで確信は持てなかったんだけどね」 ハルヒは振り返らずに淡々と話している。おかげでどんな表情なのかまったくわからない。 「それで、最初から考えてみると、つじつまが合うのよ、ほんとに、あたしとしたことがまんまと騙されちゃったわ」 俺は、ハルヒの推理を静かに聴きながら、何か別の、言い知れない不安に駆られていた。 「あんたが言ったとおり、この事件、そして誰もいなくなったの模倣ね、一人ずつ消えていくし、 そしてラストには全員いなくなってしまうのよ、でもそれじゃ事件は解決しないし、犯人もわからない」 それじゃあ迷宮入りの事件じゃないか。 「でもね、ちゃんと犯人はいるの、犯人は途中で死んだフリをした人物だったのよ」 ハルヒはゆっくりと廊下を歩いていく、何が言いたいんだ。 「その人物は死んだフリをすることによって行動の自由を得たの、だって残った人物は互いに相手を疑い始めたんだもの」 ちょっと待て、それは物語のはなしだろ? 「そう、それは小説でのことだけど、誰かがこの事件のシナリオを作ったのだとしたら、 ヒントとして似たような状況を作り出していてもおかしくないもの、それと、 みんなが消えちゃう時、共通点があったからそう言う考えになっちゃったのよね」 なんだって、共通点? そんなものあったのか。 「あったの」 そう言ってハルヒは歩みをやめ、こちらに振り返った。 「じゃあ、質問! みくるちゃんの姿を最後に見たのは誰?」 不意に質問をしてきた、その答えは俺と妹だ。 「じゃあ、有希は?」 たぶん、俺だと思う。 「古泉くんは?」 ……ちょっとまて、なんだこれは、尋問か? 確かに最後に会ったのは俺かもしれないが、 それはハルヒから見てそう取れるだけじゃないのか。 「鶴屋さんと妹ちゃんもそうよね」 おいおい、まさかハルヒは俺を犯人に仕立て上げようとしているのか、 なんかまずい方向に話が進んでいるぞ。 ハルヒが変な考えを起こさないようにしてきたことが全部裏目に出ちまってるじゃないか。 もしハルヒが俺を犯人だと決め付けて、それがハルヒの変態パワーで現実になったらどうなるんだ? まったく想像出来ん事態だ、たのむ、誰か俺に解説してくれないか? 俺が納得できる解説をしてくれた方、抽選で5名の方に粗品を進呈してやるぞ。 ハルヒは厳しい表情で俺を見ている、いや、睨んでいると言ってもいいくらい。 完全に疑っている目だ、まずい、非常にまずい、はやく何とかしなければ……。 とは言え、なにもいい考えが浮かばねぇ、どうすりゃいい。 俺は、いやな汗をかきながらハルヒの眼光に当てられ思わず後ずさり気味になっていた。 と、そこで急にハルヒがニンマリ顔になって、 「でもね、そこでキョンが犯人だ! なんて言ったりしたらソレこそ誰かの思う壺なのよ、 真相はもうちょっとひねってあるの、あたしはそれに気付いたのよ」 フフンって感じで腕を組んで勝ち誇ったように胸を張るハルヒ。 「どういうことだ」 どうやら俺が犯人だと決め付けているんじゃないらしい、少しほっとする俺。 「まあ、キョンが犯人役だったとしても、あたしを騙せるほど演技がうまくないもんね、 そんな人を犯人役にしたらミステリーが成り立たなくなっちゃうし」 まあ、そうだろうな。 「そこで、演技が出来る人を代役にしたって訳よ、ほんと、古泉くんたら手が込んでるわ」 代役? 誰のことだ? いきなりここで謎の人物か? 「今更何言ってるの、あんたのことよ、どっからスカウトしてきたのかしら、 ほんとうにキョンそっくりなんだから、全然気付かなかったわよ。そういや古泉くん、 以前はシャミセンそっくりの猫をつれてきてたわよね、で、今回はキョンそっくりの人を連れてきたってことね、 まあ、顔は特殊メイクだろうけど、声としぐさは演技賞ものだわ、でも最後にちょっとシッポを出しちゃったけど」 な、何を言ってるんだ? 俺は俺であって断じて偽者とかじゃねえ! まったく何を言い出したかと思えば……て、まてよ、ハルヒがそうだと信じたらそれが……。 「あんた、演技がうますぎるのよ、キョンはね、少々のことでもしかめっ面で軽く受け流しちゃうのよ、 それに鶴屋さんと妹ちゃんがいなくなった時、あたしを疑いの目で見てたでしょ。 それが犯人じゃないって演技なんでしょうけど、キョンは絶対そんな目であたしを見たりしないはずだもの」 あの時古泉が、狼狽したりせずに冷静でいろって言っていたのはこんな結果にならない為だったのか? いくら冷静にいつもの態度を取れなかったからって、俺が偽者だなんてそりゃねえだろ。 「ちょっとまて、いくらなんでもありえないだろ、それは。もし仮にそうだとして、 誰も気づかないなんてあるのか、どんなそっくりさんだよ、双子でも少し違いがあるんだぜ、 それにみんなともそこそこ長い付き合いだ、だまし通せるとは思えない、そうだろ」 「まあ、あんたの言うことはもっともね、だけどそれもちゃんとしたトリックがあるのよ」 なかなかいい反撃だと思ったんだが、ハルヒの表情は崩れなかった。どんなトリックだよ。 「途中までキョン本人だったのよ、そして隙を見て入れ替わったの、きっと廊下で伸びてたときに入れ替わったのね、 あの時倒れてたあんたを見てちょっと動揺してたあたしはまんまとだまされたってわけよ、 よくよく考えてみたら起きた時の言動もおかしかったし、その後、 無理やりあたしを誰もいなくなってる食堂に連れてってさらに動揺を誘ったんでしょうけど」 なんてことだ、どんどん立場が悪くなってるじゃねえか、ハルヒの瞳は完全に勝ち誇っている状態だ。 「そのあと、鶴屋さんの部屋に行った時、あんたはボロが出ないよう考え込むフリをして狸寝入りするし、 ほんと、感心するくらい騙されたわ、でもねもうネタは上がってるの、観念しなさい」 ネタもなにも俺は俺であって偽者じゃないし、だから観念することもない、断じてない! 「往生際が悪いわね、じゃあこれからあんたが偽キョンだってことを証明してあげる」 ハルヒの目がキラリと光った気がした、一体何をする気だ、まさか服を脱げとか言い出すんじゃないだろうな。 すーっと息を吸い込んだかと思うと、 「キョーンっ! 団長命令よっ、今すぐ出てきなさいっ!!」 ガラスにヒビが入るんじゃないかってくらい大声で叫びやがった、静寂に慣れていた耳がキーンとする。 思わず手で耳を抑える。そして、 「そんな大声をだすな」 俺以外の男の声。 耳を抑えていたからはっきりと聞き取れなかったが、聞いたことがあるような声がした、て、誰だよおい!? ガチャリとハルヒのすぐ隣にある扉が開いた、確かそこは俺の部屋だったはずだが。 扉が開き、中から出てきたのは、なんと見慣れているようないないような人物、それは“俺”だった。 普段見慣れているのは鏡に映ってる俺だ、だが、今目の前にいる“俺”はそれの左右逆なのだ、 写真やビデオで撮った物以外でそんな姿を見ることはない、それに自分の写真や映像なんか普段まじまじと見ないしな、 ましてやナマで見ることなんて本来ありえないことなんだが、俺は二度ほどある、これで三度目か? 「何者だお前」と、これは俺のセリフ。 「何しらばっくれてるの、こっちが本物のキョンでしょ、どう? 観念した、偽キョンさん」 何をいってるんだハルヒ、偽者はそいつだ、いや、まて、まさか……。 ゴクリと喉がなった。 まさか、ハルヒがそいつを作り出したってのか? そんなバカな、俺を偽者と決め付けると同時に、 どこかに本物がいるはずだと思い込んで……? 「よう、本物はどうやら俺の方だ、まあ、後のことはまかせろ、うまくやるからさ」 違和感がある声がした。 さて、みんなは自分の声を録音などして聞いたことがあるだろうか? 聞いたことがあるのなら話が早い、実はふだん発している自分の声とは少々聞こえ方が違うのである。 思っていたより高い声だったり、低い声だったりするのだ、 それは何故かと言うと自分の声は頭蓋骨を振動させて聞いているからって訊いた事がある、 それは骨伝導といわれてて、耳を使わず直接聴覚神経に伝わって音を認識するそうだ、 まあ、ある種の聴覚障害を持った人でも音を認識することが出来る代物らしい、 そういや最近そういうスピーカーもあるらしいな。 て、なんで俺はそんな雑学を解説してんだ? そんな場合じゃねえだろ、おい。 「と、言うわけでハルヒ、サプライズパーティはこれで終了だ、みんながあっちで待ってる、いくぞ」 もう一人の俺がハルヒを手招きして歩き出した。 「ちょっと何勝手に仕切ってるのよ、それよりあたしの見事な推理、ちゃんと聞いてた?」 ハルヒがそいつの後について行く、その姿を見て俺は言い知れぬ焦燥感を感じ取っていた。 そして、もう一人の俺が廊下の奥の扉を開き、ハルヒを中に招き入れる、 ハルヒはまだ何やらしゃべっていたが既になにを言っているのか俺の耳には入ってこなかった、呆然としていたんだろうな。 そいつがハルヒを部屋に招きいれた後、扉を閉める直前に俺の方を見てニヤリと笑ったのが見えた。 それを見て俺は我に返った、違う! そいつだ、そいつが犯人なんだ。 俺そっくりの人物、朝比奈さんも、古泉も、鶴屋さんも、妹も、あの長門でさえも、 俺そっくりだったから隙を見せて消されてしまったんだ。て、ことは……。 ──まずい、ハルヒも消されてしまう。 俺はすぐさま廊下を駆け出した、ハルヒとアイツが入っていった部屋に向かう。 くそ、間に合え、すごく足が遅く感じる、もっと早く走れよ俺の足。 「ハルヒ!」 扉の前までたどり着いて叫んだ、ドアノブに手を掛け扉を開ける。よし、鍵はまだかかっていない。 俺はまだ中にいるだろうハルヒに向かって叫ぶ。 「気をつけろ! そいつが真犯人だ、お前まで消されちまうぞ!」 部屋の中に俺の声がこだました。 だがしかし、俺が話しかけたい相手は既にもういなかったのだ。 誰もいないその部屋を見て一気に心拍数が上がる。 「うそだろ……おい」 愕然となった、ふらふらと数歩、部屋の中に入り進んだ俺は、急に体の力が抜けて、その部屋の中で座り込んでしまった、 もうこんな気持ちは二度と味わいたくないと思っていたんだがな……。 さて、どれくらいそうしていただろうか、ふと気が付くと背後の扉のところに誰かいる気配がした。 犯人か? だったら俺も連れてってくれよ、こんなところで一人残されたってどうしょうもないだろ。たのむよ。 コツコツと足音を響かせて近づいてくる、既に恐怖感などない、しかし、 さっきの俺の偽者はそんな足音がなるような靴をはいてなかったきがするんだが。 そう頭の片隅で思った時、その人物が俺に声を掛けてきた。 「うふ、キョンくん、そろそろ種明かしに行く時間ですよ」 懐かしく思えるその声を聞いて、気が抜けていた俺は思わず振り返った。 そこにいたのは───。 次回、解明編につづく
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朝比奈さん、長門、と続き、次は古泉ではないか、と思っていた矢先、 気を失ってしまった俺。 ────次に狙われたのは俺だったのか、と思っていたんだが実は…………。 新・孤島症候群─後編─ 長門の部屋で不意に意識が暗転し、気絶していた俺だったが、 どうやら誰かに揺さぶられているようだ。誰だ? 「……キョン」 いつも起こされるのは妹の声だったはずだが、この声は違うな、だけど聞き覚えのある声だ。 「起きてよ」 前にもこんなことがあったような気がするな。確かこのあと……。 「起きなさいってば!」 首をしめられるような気がした俺は本能的に身構えた。そのおかげで急激に意識がよみがえる。 「……う、うーん」 「気がついた?」 ぼんやりした頭を振りつつ起き上がり、俺を揺り起こしたであろう人物を確認する。 黄色いカチューシャが目に入る、間違いない、ハルヒその人である、 しかし、いつものような覇気のある生き生きとした表情ではなく、少し不安げに曇っていたので別人のようにみえる。 「ハルヒか、って、なんで俺寝てたんだ?」 「知りたいのはこっちよ、いつまでたっても戻ってこないから探しに出たら、 あんたはこんなところで伸びてるし、なにやってんのよ」 さて、なにしていたんだっけ? ……そうだ、長門の部屋で、ってここは廊下? どうやら俺は廊下で伸びていたらしい、だが、たしか最後の記憶じゃ本の栞を探して長門の部屋にいたはずなんだが。 「ところで古泉は?」 長門の部屋で気を失う前に一緒にいたニヤケ顔の姿を思い出した、最後に見たのは後ろ姿だったが、 「古泉くん……?」 一瞬、何か奇妙な表情をするハルヒ、なんだ? だがすぐさま俺を睨み返して、 「それもこっちのセリフよ、あんたが古泉くんと一緒に有希を探しにいったんでしょが」 ハルヒは古泉を見ていない、ってことは俺が長門の部屋に入った後、古泉も着いてきたってことだよな、 だとすれば俺が背後に感じた気配は古泉だったのか? いや、なぜだか違う気がする、 あの時の気配は俺より低い位置から感じた、古泉は俺より背が高いからな、 だとしたら俺が気を失った直後に長門の部屋に来て、俺を気絶させたヤツを見たはずだ。 「まさか」 俺は今居る場所を再確認する、長門の部屋の前の廊下だ、 てことは部屋の中で気絶した俺をここまで移動させたやつが居るってことだ。 おそらくそれは古泉で間違いないだろう、おかげで俺は気を失う程度で済んだってことか、 そして、気を失った俺を放置していたとなると、おそらく古泉も朝比奈さんや長門と同様に、 行方不明になってしまったってことだろう、くそ、俺の身代わりに。 俺は閉ざされた部屋の扉をにらみつけながら立ち上がる。 「どうしたのよ」 ハルヒは訝しげに俺を見る、そりゃそうだろう、ハルヒにはこの状況の説明は何もしていない、 すべて古泉たちが仕組んだサプライズだと思っているんだからな。 だが、そんなことを考えている余裕はなかった。俺は後先考えず、長門の部屋の扉を開けた。 予想どおり、誰も居ない、そんなことは確認しなくても解っていることだ、 俺が今一番確認したいことは本の栞だ、しかし、その栞は本ごとなくなっていた、 どうやら犯人はそれを見られたくなかったようだ。だから俺を気絶させたんだろう。 やはり栞になにかしら長門のメッセージが書いてあったってことか。 「あんたねえ、なにがあったかぐらい少しは説明しなさいよ、いつも……」 「ハルヒ」 なにか言いたげだったハルヒのセリフを途中でとめて、 「一階の食堂に向かうぞ」 そう言って俺はハルヒの手を掴み、廊下をずんずんと歩き始めた。 「何よ? え、ちょっとキョン?」 戸惑うハルヒをよそに、俺は森さんたち機関の人達に相談しに行くことにした。 食堂に着いた俺達はさっきまで居たであろう森さんや新川さん達が居なくなっていることに困惑していた。 テーブルの上にある飲みかけのカップや万年筆、厨房には湯気が出ているケトルと、 おぼんに乗っている食器がポツンとあった。 みんな煙のように消えてしまっている。と言った方がいいかもしれない。 くそ、ここで古泉が言っていた言葉を思い出した。ハルヒの前では決して取り乱したりしないってことだったな。 とはいえ、この状況で冷静にしていられるほど俺は出来た人間じゃないってことだ、だってそうだろ。 さっきまで気絶させられていた俺が冷静にしているのもおかしな話である。 俺はしばらく呆けてしまっていたのだ。 「ねえ、キョン……」 いつもとは違うおとなしい感じでハルヒは口を開いた。 「これ、ひょっとして夢なのかな」 ハルヒはきっといつぞやのことを思い出しているようだ、まずいな、 このままいくと神人とやらが出てきてあの夜と同じことが起こるかもしれん、そうだとしたら最後は……。 いかん、それだけは回避したい、それにこの場所には俺の妹と鶴屋さんもいるんだしな。 いや、まてよ、ひょっとしたらここはすでに閉鎖空間ですでに俺達二人しか居ない、なんて事はないだろうな。 それはありえないか、ここが閉鎖空間じゃない証拠に、外で振っている雨と風の音が聞こえている、 たしかあの空間は雨も風も雲も太陽もなかったからな。 瞳を輝かせて何かを思いついた時のような笑顔のハルヒと、今の不安げなハルヒ、さて、どちらがいい? ハルヒには笑顔が一番似合ってると思うが、それは同時に俺が苦労する羽目になるのだ、 で、しおらしいハルヒはどうかというと、これはこれで可愛く見えてしまう、さて、俺はなにを言っているんだろうね。 いかん、落ち着け俺、古泉の言葉を思い出すんだ。冷静にならないと闇雲にハルヒを不安にさせてしまう、 こいつには真相を知られる訳にはいかないんだからな。 今更だがハルヒの手前、一芝居打っておかないといかん、 「ど、どうやら古泉達に一杯食わされたようだ、な」 少々声が上ずってしまっていたが、そこは大目にみてほしいところだ。 しかし、悪いな古泉、恩を仇でかえすようなことをしちまって、とりあえず全部お前たちの仕業ってことにさせてもらうぞ。 「なに? どういうこと」 「こいつは以前お前が言っていた有名なミステリーの模倣じゃないのか、 たしか『誰も居なくなった』とかなんとか」 「ちょっと違うわよ、『そして誰もいなくなった』よ」 ハルヒはいつもの調子にもどって、 「ふうん、なるほどねぇ、キョンにしてはなかなか冴えてる推理じゃない」 不敵な流し目で俺を見下すように見るハルヒ。その姿を見て俺はなにやら無性に不安になってきた。 俺はまた余計なことを口走ったのではなかろうか。 「と、なると……」 ハルヒがあごに手を当てて思案しはじめた、そして何かに気付くようにハッとして、こちらを向く、 そのハルヒの姿を見ていた俺も同様にあることに気が付いた、同時に言葉が出る。 「ひょっとして次は鶴屋さんか妹ちゃんがいなくなるかも」 「まさか次は鶴屋さんと妹が……」 顔を見合わせたハルヒと俺は瞬きする間も惜しんで二階に駆け上がった。 「おぉっと……、どうしたんだいっ、お二人さん」 居眠りをして船を漕ぎ出していた鶴屋さんが俺達が勢い良く部屋に入ってきたことに驚きながら立ち上がった。 「おんや? 二人だけ? 有希っこと一樹くんは?」 鶴屋さんと妹はどうやら無事のようだ、俺達は結構派手に登場したんだが、妹はベッドで熟睡したままだった。 ある意味大物になりそうだ、だが火事や地震などがあったら逃げ遅れること必至だぞ。 「それがどうやらみんな消えてしまったみたいなのよ、ていうのは建て前で、みんなどっかに隠れてるんだわ、 キョンが言うには有名なミステリーの模倣らしいんだけど……」 ハルヒは鶴屋さんに説明し始めた、去年の冬の時、ハルヒと二人で古泉が作った推理ゲームを解き明かしたからか、 鶴屋さんにも謎解きのご教授を願うみたいだ。 他力本願で悪いがもう鶴屋さんしか居ないのである、てか、ここに居る四人しかもうこの館にはいないのだ。 いや、もう一人犯人が居るのかもしれないが。 くそ、一体どうなってんだ? 本当にみんな消えちまったのか? 古泉が言っていた存在が希薄になってるってやつなのか? だとしたら俺が感じたあの気配と、 気絶させられたことにつじつまが合わねえ、それに人だけが消えて荷物や形跡が残ってるのも変だし。 俺はハルヒと鶴屋さんがなにやら相談しながらあーだこーだと言っているやり取りを眺めつつ、 部屋にあった椅子に座り、まとまらない疑問を頭の中で渦巻かせていた。 何か見落としている部分はないか? さてどうだろうか、古泉なら色々と説明してくれそうだがな。 「本当にお解かりでないんですか? とっくに気付いていたと思っていましたが」 いつぞやの古泉のセリフがよぎった、前言撤回あいつの言い回しはわかりにくいんだった、 話がよけいややこしくなりそうだ。 いつも困った時は長門に相談していたっけ、今回も相談したな、結果は俺次第ってことだったが、 「あなたに賭ける」だから何をだよ、俺はただの一般人なんだ。 それから朝比奈さん、あなたのお姿とあなたが淹れて下さったお茶が懐かしゅうございます。 「彼女の一挙手一投足にはすべて理由がある」まさかな、それはないだろう、あいつは結構単純だ。 しかし、単純だからこそこの世界は安定していたのかもしれない、あと強情で負けず嫌いだが。 ん、ハルヒ? まさかハルヒがこの状況を望んだからこうなったのか? いや、それはありえん、そんなことハルヒが望むわけないじゃないか、確信はないが俺はそう思うんだ、 だが、俺がそう思っていただけで実際は違うのか? 人間の心理なんてそうやすやすと計り知れるものではない、ということなのか。 「彼女には願望を実現する能力がある」こんなことを古泉は言っていたが。 事実ハルヒが望んだとされることがすべて現実になっているのはあまりない、と思う。実際はあるんだが。 ハルヒが認識できなかったらかなっていないのと同じだ、だろ? 今のハルヒならそこそこ常識的な行動を身につけてき始めているが、SOS団結成以前だったらどうだったのか、 それこそ本気でいろいろとやってたらしいからな、そのことに関しちゃ谷口あたりが詳しそうだが、 俺はあまり知らん、ひょっとしたら古泉あたりが後始末に追われていたのかもしれんがな。 もしも、だ、ハルヒのようなトンでもパワーが俺に有ったとして、願望が実現できるとしたらどうだろう、 しかも多感な中学生くらいの時にだ、ふむ、はっきり言おう俺は超能力者になって、 悪い異星人に連れ去られたヒロインを救い出すような物語の主人公になりたかったのだ。そこ、笑うなよ。 結構本気でサイコキネシスやテレパシーの存在を信じていたんだからな。 てことはハルヒような力があればその願望が実現できたのだろうか? それとも世界の物理法則を捻じ曲げるような願望ははなっから実現不可能として却下されてしまうのか。 ならば実現可能な願望ならどうだろうか、いやいや、そんなありえないこと考えるんじゃなくてだな、 そんな力を持った人間としてもだ、いずれ誰かと意見が衝突したりすることもあるし、 気に食わないやつがいたりすることもあるだろう、そんな状況になってどういうことを思うのか? 親しい友人でも喧嘩するときがある、親と言い争いになったりもする、 そんな心理状況の時に思ってしまったことが実現するのだとしたら……。 古泉の言葉じゃないがちょっとした恐怖だな。佐々木が辞退することも頷ける。 だがハルヒはそうじゃなかった、あいつは閉鎖空間を作り出し、巨人を暴れさせてストレスを解消してたんだ、 古泉達はどう思ってるか知らないが、ある意味平和的だといえるだろう、誰かの不幸を願ったりするよりもな。 俺だったらせめて望みがかなうのは三つくらいにしておくのが丁度いいかも知れん。 俺の望みは安定した収入と犬を洗える位の庭付きのマイホームと安穏とした老後、こんなもんか……。 ────で、なんの話だっけ? あれ? ガクリとイスの背もたれに乗せていた肘がはずれ、 びくっとなって目を開いた。 なにやら幸せな家庭生活を営んでいた気がするんだが、夢か、って、寝てたのか俺。 まずい、こんなときに寝ちまうなんてなんて不謹慎なんだ、ハルヒに見られたら何を言われることやら……、 て、いない? 今この部屋にいるのは俺と眠っている妹だけだった。 ちょっとまて、冗談だろ。一気に血の気が失せた、ハルヒ、鶴屋さん、二人とも消えちまったのか? そんな馬鹿なことがあるか、さっきまでそこにいたんだぞ、何の物音も立てずに二人を消しちまったっていうのか。 呆然と立ち尽くしていると、入り口のドアがガチャリと開いた。 びくっとして俺はその方向を見る、 「お、お目覚めかいっ、キョンくんっ、口によだれがついてるよぉん」 「つ、鶴屋さん、どこにいってたんですか、心配したじゃないですか、ほんとに」 俺は一気に全身の力が抜けて再度イスに座り込んだ。ついでによだれも拭いておく。 「いやぁ、めんごめんごっ、ちょいっとした生理現象さっ」 うぐいすの鳴き声のようにあっけらかんと言い放った鶴屋さんはベッドの上に座り込んだ。 「目が覚めたら二人ともいなくなってたからてっきり消えてしまったのかと……」 ふと鶴屋さんの顔を見るとなにやら俺の顔色を伺っているような感じでこっちを見ている、いったいなんなんだ? 「で、ハルヒは一緒じゃなかったんですか?」 「やっぱハルにゃんが心配かい?」 ニヤッと笑った猫科の生物の表情でまじまじと俺の顔を見る鶴屋さん、思わず目線をそらしてしまう。 「か、仮にも団長様だからな、一応。でも俺なんかが心配しようがしまいがあいつは自力でなんでも出来ちまうやつですよ」 そういいながら俺は立ち上がる、なんでかな、なにか急激に部屋にいるのが落ち着かなくなってきたのだ。 「ハルにゃんはついさっきまで一緒にいたんだけどねっ、急に『やっぱちゃんと自分の目で探してみなきゃだめね』 と言って下の階に走ってったのさっ」 まあ、自ら行動しはじめてイノシシの様に突き進むのはいつものことだ。 俺は立ち上がったついでとばかりに、 「俺もちょっくら生理現象のようです」 っと鶴屋さんに伝えてドアの方に進み始めた。 部屋から出る直前、鶴屋さんが俺に、 「がんばるっさ少年K」と小声で言っていた。なんですかそれは、少年Kって俺のことですか、まさか、少年Nの悲劇の次回作? などと冗談を言っている場合じゃないな。 さてっと、たしかハルヒは下に行ったんだったな。 とりあえず一階に向かう、不気味なまでに静まり返ったこの別荘で、聞こえてくるのは外の雨の音のみ、 しかも今は深夜で、俺を気絶させた者がいるかもしれないんだ、そして一番頼りにしていた長門もすでにいない。 なにか武器になりそうなものがあれば少しは落ち着くんだろうか、くそ、ビビるんじゃねえ。 とはいえ、なんの特技もない一般人の俺が、長門や古泉達をどうこうしちまったやつ相手に対抗できるとは思えん、 じゃあ、何で俺はこんな無謀なことに身を投じているんだ? 全く解らん、だがおとなしく部屋で待ってるよりかは幾分ましだ、 何か行動を起こしているほうが気がまぎれるってもんだろ。 それから、ハルヒは完全に古泉達の仕業と考えてるからな、ここはうまく誘導してやらないと簡単に敵の手に落ちてしまうかもしれん、 しかし、もし犯人が去年ハルヒが作り出した神出鬼没の何かだったとしたら、 それにハルヒが襲われるなんてことがあるのだろうか、まったくわからんが。 そういや古泉がハルヒの作り出した者が俺達に敵意をもって危害を加えるなんてことはないと言っていたな、 その意見は俺も同意しとく、とはいえ、犯人の正体もわかっていないんじゃ何の確信も持てないが。 一階を見回したがハルヒの姿はなかった。不安が倍増する。 地下の遊戯室まで行ったのか? しかし、こんな状況でしかも静まり返ったこんな洋風の別荘の地下室に一人で向かう事になるなんて、 一体どこの体感ホラーゲームだよ、こんなアトラクションなんざ望んでねえっつーの。金返せ、払ってないけど。 そいうや、昔やったゲームに似たようなシチュエーションがあったなぁ、そんときゃ、 なんで主人公はわざわざ殺されるような危険な場所に自ら行くんだ? などと思ってたんだが、 よもや自分が実践することになろうとは……。 いかんいかん、余計なことを考えてたらゲームの映像が出てきちまったじゃねえか、ドアを開けたら血まみれの……。 「────!!」 駄目だ、駄目だ! 変な考えを起こすんじゃねえ俺の頭。 俺は雑念を振り払うように頭を左右に振った。そのときである。 「……キョン?」 背後から声がした。 天井に頭をぶつけそうになるくらい飛び上がった、魂と共に心臓も口から出てきたんじゃないかと思うくらい、 鼓動が止まった気がする。 俺は反射的に声のしたほうに向いた、だが、情けないことに向くと同時にしりもちをついてしまったのだ。 「ハ、ハルヒ……」 かろうじて声を出す。 そこにいたのは左右の靴をはき間違えて外出したことに気付いてしまったような表情のハルヒだった。 「お、驚かすなよ」 心臓が止まるところだったぞ、おっと、確認してなかったが止まってないよな。自分の胸に手をやって確認する。 「驚いたのはこっちよ、あんたがそんなリアクション取るなんて予想外だったわ、 あーミスったな、今のビデオに撮っとけばよかったわぁ」 ケケケ、と悪戯を思いついた悪ガキの様な笑みを浮かべながらハルヒは近づいてきて、しりもちをついた俺に手を差し伸べた。 俺がその手を掴もうとした時、ハルヒ少しためらいの表情を浮かべ、俺の手をしばし見つめてた気がしたが、 ハルヒの姿と思わぬ失態をさらしてしまったこととによる複雑な気分が、俺の中でマヨネーズのように混ざり合って、 まともな思考が働かなくなっていたのだ。 俺はそのまま何も考えずに差し伸べられた手をつかんでしまった。 あとから考えたらかなりカッコ悪い姿だ。また思い出したくねえ記憶が増えちまった、欝だ。 そんなことを考えてた俺は、ハルヒが手を差し伸べるなんてらしくない姿だということにも頭が回らなかったのである。 「やっぱそう簡単には見つからないわね、みんなが隠れてる場所」 ハルヒは溜息交じりにつぶやいた、珍しくあきらめが早いな。 「まあね、推理なんて事件が終わってからでないと考えても仕方ないと思ったのよ、それに、 ちょっと小腹がすいてきたってのもあるし、続きはなにか食べてからにしましょ」 そういってハルヒは食堂の厨房に向かっていった。まったく能天気でいいなお前は。 一般市民である俺はこんな状況に陥っちまって食欲もでねえんだ、少しは俺に分けてくれ。 厨房に入って約15分くらいしてからハルヒが出てきた、山盛りのパスタを乗せた大き目の器を持っている。 「おい、お前はどんだけ食うつもりなんだ、夜食とか小腹がすいたって程度の量じゃないぞ、それは」 「一人で食べるんじゃないわよ、あんたと鶴屋さん入れて三人分作ったのよ」 それにしてもちょっと大盛りなきがしなくもないが、ハルヒにとってはこの量が三人前なんだろうか、 そういや、ハルヒの作る料理はいつも大量だったな、それはもともとコイツは大食いだからなのか? 長門がいればちょうどいい量かもしれないが、今は行方不明だからな。 「ひょっとしたらこの香りに誘われて隠れてる誰かが出てくるかもしれないじゃない」 それが朝比奈さんや長門だったらいいんだが、神出鬼没の犯人が出てくることのないように俺は願いたい。 だが、たしかにいい香りがするな、少々の騒音でも起きない妹もこの臭いで起き出すかもしれん。 「じゃ、鶴屋さんの部屋に行くわよ、食事はみんなで食べた方がおいしいもんね」 パスタの入った器で両手でふさがれたハルヒはニンマリと微笑むと、 「それからキョン、取り皿持ってきてちょうだい、人数分、あと箸も」 俺はそんなハルヒの姿を見てさっきまでの緊張感はなんだったんだろうと思いながら厨房に向かい、 小皿数枚と箸を探しはじめた。まったく何やってんだ、こんな非常事態に俺は。で、フォークじゃなくて箸でいいのか? ハルヒに続いて二階に向かっていく。 このままハルヒのペースに流されたままでいいのかよ、俺。とは言え、俺になにか出来るのか? つってもなんも出来ないのが実情なのだが、出来るのはせいぜいツッコミ役ぐらいだ、情けねえ。 そうこうしているうちに、鶴屋さんの部屋の前に着いた。 ハルヒは鶴屋さんの部屋のドアをいきなり開けて、 「鶴屋さん! 夜食作ったから一緒に食べましょう」 おいおいハルヒ、せめてノックぐらいしろよ。 後ろから着いて来ていた俺はハルヒを止めることも、先にノックしたり、声をかけることも出来なかったのだ。 さすがにこの元気なハルヒの声を聞いたら妹も目が覚めるかも知れんな。などと思っていると、 「缶詰のパスタソースで作った手抜きメニューなんだけど……て、あれ?」 ハルヒは献立の説明をしながら部屋に入り、数歩も行かないうちに何かに気付いたように立ち止まった。 なんだ? ひょっとして鶴屋さんも爆睡しちまったのか? そういやさっきは眠そうにしていたっけ。 「……いない」 ポツリとハルヒ。 「な……なんだって!?」 一瞬にして思考が止まってしまった。俺は部屋の入り口近くに立ちつくしているハルヒを押しのけ、中を確認した。 中には誰もいなかった、鶴屋さんも、寝ていた妹もである。 よく、衝撃的な場面に出くわした人は手に持っていた物を落としたりする表現がテレビなどであるが、 実際その状況になったらそんなことはない、逆に力が入って持ってるものを放せなくなるのだ。 あと、以外に取り乱したりするようなことはなく、何故か普段と同じ行動をとったりするんだそうだ。 ま、状況の把握までタイムラグが生じている、っと言った方がいいのかもしれない。 俺とハルヒは持っていた食器をテーブルの上に置き、誰もいなくなった部屋の中を見渡した。 沈黙がながれる。 つづく
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朝比奈さんがいなくなった────、 これが、この後俺がとんでもなく苦労する事件の幕開けだったとは知る由もなかった。 新・孤島症候群─前編─ その後、皆の所についた俺たちは誰も朝比奈さんを呼び出したりしてないことを知ると、 妹を鶴屋さんに預け、手分けして探すことになった。 一階は多丸兄弟とハルヒ、二階は森さんと新川さんと長門、三階が俺と古泉で探すことになった。 長門に聞くのが一番手っ取り早いがその前に聞いておかなければならない相手がちょうど目の前にいる。 「古泉、ひょっとしてこれはお前の仲間たちが仕組んだサプライズなのか? 消えてしまった朝比奈さんを探すかくれんぼ的な何かなら最初にそういってくれ、 決して怒ってるわけじゃない、それならまだ楽しむべき余地があるってだけだ。 こんな不安な気分はとても心臓に悪いからな」 俺はいつもの笑みを消失したハンサム野郎に問いただした。 こいつがすでにまじめな顔になっている時点で心臓に悪いのだが、それでも問い詰めたい心境だった。 「残念ながら僕も先ほど新川さんと森さんに問い合わせましたがそんな予定はないそうです」 「それは演技じゃないだろうな」 「それはないと思います、もしサプライズを仕掛けるとしても、 こんな初日の夜からはしないはずですからね、 新川さんも森さんも予定外なことだと言ってましたし」 階段を上りながら古泉はいう、いつもの冗談であって欲しかったがどうやら本当のようだ。 三階を探索しつつ俺と古泉は片っ端から扉を開ける、どの部屋も鍵はかかっていなかった。 もちろん、中に誰もいない。 「こうなると彼女は時間移動したと考えた方が良いですね、 そうだとすると涼宮さんにどう説明すればいいのか考えないといけないんですが……」 俺も最初にそう思ったが、朝比奈さんが前触れもなくいきなり時間移動するなんて思えなかったからな、 あの時、朝比奈さんは『また後でね』って言ったんだ、いくらなんでもお別れのセリフじゃない。 あと、ハルヒにホントのことを言うわけにはいかないからな、 お前たちが仕組んだサプライズだと思わせた方がいい気もする。 しかし、真相がわからんうちは、うかつな行動は出来ないな。 「そうですね……」 と、言った後古泉は思慮深く伏せた目をゆっくりと開き、 「実を言うとひょっとしたらあなたなら真相を知ってるんじゃないかと僕は思ってたんですが、 その様子じゃ本当に前触れもなく彼女は消えてしまったんですね」 どうやら古泉は俺と朝比奈さんでまたもや時間移動をして、 なにやら未来からの指令でお使いもどきをしているんじゃないかと勘ぐっていたようだ。 そうだったら良かったんだがな。 俺はこんなところを真面目に探しても朝比奈さんを見つけることは出来ないと判断し、 二階に向かうことにした。 もう一人の方のSOS団メンバーにも相談しなきゃならん。 「とりあえず長門に相談してくる」 二階に行くと、鶴屋さんと妹に会った。妹はすでに限界らしく、 今日のところは鶴屋さんの部屋に泊まることにしてもらったようだ。 鶴屋さんと一緒なら安心です。 「すいません、鶴屋さん、お願いします」 「妹ちゃんはまかしときなっ、そのかわりキョンくんっ、 みくるを見つけてきたら超特急であたしのところに連れて来るんだよっ、 みんなを心配させたことを、あたしがメって叱ってあげっからさっ!」 「解りました、必ず見つけて連れてきます」 鶴屋さんの口調はいつもの感じだったが、やはり心配しているのだろう、 いつもの覇気は感じられなかった。 「あ、そうだ鶴屋さん、長門がどこにいるかわかりますか? たしかこの階にいるはずですが、 長門にもちょっと聞いておかなきゃならない事がありまして……」 大体の事情を知っている鶴屋さんだからこそ言えるセリフである。 「長門ちゃん? そういやさっき自分の部屋に入っていったような……、あれ? みくるの部屋だったか? ま、どっちか知んないけど部屋に入ってったと思うよ」 鶴屋さんを見送ったあと、俺はまず隣の朝比奈さんの部屋に向かった。 ノックをすると、「どうぞ」っと新川さんのしぶい声が聞こえた。 中に入ると森さんと新川さんがいて、長門はいなかった、森さんはクローゼットの中を調べていて、 新川さんは窓の外を注意深く見ていた。 「何かわかりましたか?」とりあえず聞いてみた。 予想通り、なんの痕跡も見当たらなかったそうだ、しかし、二人とも調べ方に無駄がないというか、 手馴れた感じが見受けられるんだが、この人たちは本当に何者なんだろうか。 次に俺は長門の部屋に向かう。 いきなり開けるのも何だと思い、とりあえずノックをしようと手をあげた時、ドアが開いた。 当然ドアを開けたのは宇宙人製有機アンドロイド、SOS団の影の最高実力者だ。 「長門……、いたか、さっそくで悪いがこの状況どうなっている? 朝比奈さんはどこにいったんだ?」 長門はゆっくりとした動きで背中を向け、 「……入って」 と言って部屋の中に歩き出した。 さすが長門、何か解ったんだろうか、と期待して俺も後に続いて部屋に入った。 しかし、期待した答えは聞けなかった。 「朝比奈みくるは現在時空間に存在していない、異時間同位体の存在も確認されていない」 いつもの抑揚のない声で話す長門。て、ことは朝比奈さんは時間移動をしたってことなのか。 「彼女の持つ能力を考慮するならそう考えるのが妥当、その可能性も高い、 しかし、他の可能性も危惧できない」 他の可能性? 長門は少しためらうように俺の顔を見て、 「朝比奈みくるが存在するはずの未来がなくなった可能性」 どういうことだ、それは? なんとなくしか解らんが、未来がなくなる? 「朝比奈みくるがいない別の未来に、または、 未来には存在しているがこの時間に時間移動をしてくることがない未来に分岐したのかもしれない」 ちょ、ちょっと待ってくれ、妹をトイレに行かせて歯を磨かせる間に、 そんなごっそり未来が変わっちまうような選択肢なんて無かったはずだぞ。 まさか妹をトイレに行かせたり歯を磨かせるのが朝比奈さんの未来をなくしたってんじゃないだろう? それともそんな些細なことで変わっちまうものなのか、未来は。 じゃ、何か? 俺のとった行動で朝比奈さんを消しちまったのか。 「まだそうと決まったわけではない、そんな程度では未来に向かう流れを変えることは不可能、 ──落ち着いて」 少々頭に血がのぼっていた様だ、長門の最後のセリフ『落ち着いて』を、 音量をあげてゆっくりと言ってくれたおかげで俺はどうにか落ち着いた、サンキュー長門。 「それじゃ俺たちはこれからどう行動すればいい? あと、この件なんて説明すればいい? 朝比奈さんの正体は言えないからな、ハルヒには」 原因は解らないままだが、それよりこれからどうするかってのが今考えるべき優先事項だ、 そのために長門のところに来たってことを今更ながら思い出した。 「わたしは観測するのみ、ただ、わたしと言う個体は、このような変化を望んでいない。 むしろ現状回復を望んでいる、……未来との同期機能を禁止したため、 どの行動がわたしの望む未来につながるのか知るすべはない。 ……だが、わたしは鍵であるあなたの行動に従うのが良いと判断する」 まっすぐ俺の方を見ていた長門は、そう言うと部屋のベッドの上に座り込んだ。 おいおい、質問を質問で返すなよ、なんだ? 結局は俺次第ってことなのか。 「……そう」 うーん、断言しやがったぞ、まったくなんだか知らんが肝心な選択はいつも俺のような気がする。 ただの一般人に押し付けないほうがいいと思うんだがな。 「それじゃあ……と」 少し考察したが、やっぱり俺には安易な考えしか浮かばなかったのだ。 「ハルヒには朝比奈さんが消えたのは古泉たちの仕組んだサプライズってことにする、 それでいいか、長門。ハルヒがそう信じればそれが現実になるかもしれないからな、 まあ、これは古泉理論だが」 長門は「わかった」っと言って頷いた。最小限の動きで。 そうと決まればさっそく古泉にも報告しなきゃならん、 あいつならどんな状況でもうまく説明してくれそうだしな、ハルヒへの説明役はまかせたぞ。 そう思い、長門の部屋から出て古泉を探しにいく。 さて、あいつはまだ三階かな。 「ちょっとキョン! あんた古泉くんと三階を捜索してたんじゃなかったの?」 げ、ハルヒ。不意に声をかけられてギクリとする、おどかすなよ。 「それになんで有希の部屋から出てくんのよ! みくるちゃんがいなくなると言う非常事態なのに、 女の子の部屋を物色するようなマネしてるなんて非常識よ! こんなアホが団員にいるなんて団長として恥ずかしくて涙が出てくるわ! いえ、あたしの涙はそんな安っぽくないわよ、ダイヤよりも価値があるんだからね!」 涙を比喩するなら真珠じゃないのか。などと思ったが口には出さない。 「そんな大罪を犯したあんたは罰として雨の中、別荘の外の探索でもしてもうらおうかしら」 ハルヒはズカズカと俺の前まで進み、目にもとまらぬ動きで俺の胸ぐらを掴み、締め上げた。こ、殺される。 「ま、まて、誤解だって……、話を聞けよ、……ちょっと長門と相談してただけだ」 とにかく俺は事後報告としての三階の探索結果と、長門に相談しに来た理由をハルヒに説明する。 「だから、古泉と長門に訊いたらこれは去年と同じようなサプライズパーティーかもしれないってことなんだ、 古泉も今回は騙される側にいるから詳しいことは知らされてないらしいんだ、 そこで俺は長門にも訊いてみただけなんだよ」 いくら説明してもハルヒは疑いの眼差しで俺を睨んだままだ、 くそ、俺じゃハルヒを納得させることは出来ないみたいだ、やはりこの役は古泉が適任だ。 だから早く助けに来い。そして口裏を合わせてくれ、おまえならできる。 て言うか長門、お前なら部屋の中にいても俺のこの状況を知ることが出来るんじゃないのか、 出てきて助け舟を渡してくれよ。 俺の祈りが通じたかどうか知らないが、程なく古泉が来てうまくハルヒをなだめてくれた。 ハルヒは、そうなの? と一言いって納得する、くそ、古泉の説明なら簡単に聞きやがって。 「何いってるの、あんたと違って古泉くんは副団長なのよ、信頼できる実績があるに決まってるじゃない、 ただの雑用係のあんたとは出来が違うのよ」 だそうだ、よかったな、古泉。お前らの崇める女神様から信頼されてるぞ。 しかし、さすがと言うべきか、よくボロが出ずに説明できるな。りっぱな詐欺師になれるぞ。 て、ずっと猫をかぶってるお前はすでに詐欺師みたいなもんだがな。 「て、ことは消えたみくるちゃんを探すのが今回の目的なのよね、ふむ。なるほどね」 なにがなるほどか知らんがハルヒの興味が別の方に向いたのは幸いだ、今のうちに、 「古泉、早く新川さんと森さんたちにこの経緯を話しておいた方がいいんじゃないのか」 俺はハルヒに聞こえないように小声で耳打ちした。 「実を言うと、ここに来たのは先ほど長門さんから連絡があったからでして、 あなたとの相談結果は既に森さん達に連絡しておきました、安心してください」 なんだ、うまく口裏をあわせてくれたんだと感心していたがここに来る前に知っていたのか、 とはいえ、もうちょっとでこの雨の中外に放り出されるところだったからな、 助かったぜ、と言いたいが俺にウインクするな気色悪い。だから感謝の辞は長門に送ることにする。 しかし、結果的には助かったが長門も遠回りな助け舟を出したもんだ、 それともハルヒに説明するのは古泉が適任だとでも判断したんだろうか、たぶんそうかもしれないな。 長門がでっち上げの説明を長々とハルヒにするようなことはしないだろうからな、 そういうのはここにいるニヤケ野郎の分野だ、ん、そういえばコイツの表情、 デフォルトの激安スマイルに戻ってやがるぞ。 「今回の出来事はサプライズパーティの一種ということにするのでしょう? だったら涼宮さんをその気にさせた方がいいのではないでしょうか、それに、僕は演技が得意ですからね」 どちらかといえば詐欺師にちかいんだが。 「なにこそこそ話してるのよあんた達、なんか気づいたことでもあるの? だったらちゃんとあたしに報告しなさい」 いつのまにやらハルヒが両手を腰にあて、仁王立ちでこちらを見ていた。 とは言え、不機嫌でも怒っているわけでもないようだ、それはハルヒの目の輝きをみれば一目瞭然だ。 「なんでもねえよ」 と、俺は軽くごまかし、 「で、ハルヒ、これからどうするんだ、もう一回別荘の中見て回るのか?」 「うーんそうねぇ……、さっきとは違う視点で探索した方が良さそうね、 隠し通路や隠し部屋とかがあるかもしれないしね」 そう言われればここは古泉のいう機関が用意した場所だ、そんなもんがあってもなんら不思議じゃないな、 地下に秘密基地のようなものがあり、 そこで指揮官やら支部長などが古泉たちエスパー戦隊に命令を下している、なんてな。 なぜか指揮官は森さんで参謀が新川さんというキャスティングとなっており、 露出多めの衣装をまとった森さんの指令に、イエス・マム! などといって出撃する古泉──。 われながらアホな想像をしてしまったようだ、俺の顔をみた古泉はなにやら怪訝な表情をした。 「残念ですが隠し通路や隠し部屋なんてものまでは用意してないですよ」 古泉は聞いてもいないのに返事をしてきた。 「そうなると、まずみくるちゃんの部屋をちゃんと調べたほうがいいわね、 隠し通路や階段があって別の部屋に繋がってるかもしれないわ、キョン、一緒に来なさい」 「おい、ちょっとまて、なんで俺だけなんだ……」 古泉は? と言いかけた時、 「いいから、さっさと来なさい! あ、古泉くんは情報収集を頼んだわよ」 と言って俺の腕を掴んで無理やり引っ張っていく、その姿が滑稽にみえるのか 古泉がいつも以上にニヤついて俺に手を振って見送っていやがる、くそ、厄介ごとを押し付けられた気分だ。 再び朝比奈さんの部屋に来た、先ほどとは違い、森さんと新川さんの姿はなかった、 今頃、機関のメンバーで今後の傾向と対策を練っているのかもしれない。 ハルヒは、部屋に入って扉を閉めるなり、 「今回も古泉くんは事情を知っていて私たちを欺いてるかもしれないわ」 いたずら好きな猫のような表情でハルヒは俺につぶやいた。俺は違うと思うがな。 「実際はどっちでもいいのよ、ただそう考えて行動した方がより面白いじゃない、 折角いい舞台用意されてるんだし」 そうかい、好きにしろ。俺はこのまま朝比奈さんが消えちまった事実をなんとかしてもらいたいだけだ。 「で、この部屋を調べるのか」 さっき新川さんと森さんが調べてなにもなかったんだから俺たちが調べても、 もう何も発見することはないはずだ、俺としては無駄な労働は極力したくないんだが。 「その前に……」 ハルヒが威圧的な声をだし、俺を見据えた。 「キョン、有希とはどういうやり取りでなんて言っていたの? 詳しく教えなさい」 なんだか知らないが、いきなり始まった尋問に俺は動揺する、いかん落ち着け、 また変な誤解をされちまうぞ。 とりあえず真実は話せないから古泉が言っていたことを反芻するような感じで言葉を紡ぐ。 それを聞いてハルヒは、あごに手を当て、思考をめぐらすように壁か空間かをにらみ、 「ひょっとしたら有希もグルかもしれないわね」 おいおい、いくらなんでもそれはないだろう。 「もちろん、有希があたしたちを騙すなんて思わないわ、きっと、この事件の真相に気づいたのよ、 それであえて古泉くんの話に乗って、自分は傍観者になってるんだわ」 お前は違う意味で感が鋭いな、確かに長門は傍観者で、観察するのが使命だといってるしな。 「それもそう考えた方が面白いからか? だからと言って長門と古泉を仲間はずれにするのはちょっとどうかと思うぞ、俺は。 それに、それは全部お前の勝手な推理であって事実じゃないだろ」 「わかってるわよそんなこと、こう考えた方が面白いって話よ、 あたしが仲間はずれになんかする訳ないじゃない、でも……」 勢い良くしゃべってたと思ったら急に失速した、でも、なんだ? 「ううん……なんでもない」 ハルヒは何やら言いよどんだが、すぐさま勢いを取り戻し、俺のほうに一歩踏み出して、 「これからみんなあたしの部屋にいったん集合しましょ、収集した情報の整理をしなきゃね、 あと、解ってると思うけど有希と古泉くんにはさっきのことは内緒にしときなさいよ」 別にお前の推理をあいつらに言うつもりはないが、なぜ敢えて口止めをする。 「決まってるじゃない、あの二人は真相を知っていてこの推理ゲームをより面白くする偽の情報を持ってくる可能性があるからよ」 お前がこの事件を完全に推理ゲームだと思い込んでくれさえすればいいさ、 そのためなら俺は少々お前の理不尽な命令だって聞いてやるよ。と、まあ結果はいつもと変わらん気もするが、 今回は心構えがぜんぜん違う、この事件を朝比奈さんを見つけ出すというハッピーエンドにさえなればいいんだ。 「それにもし、このことを有希と古泉くんに話して、『ばれちゃいましたか、実はこの事件の真相は~なんですよ』なんて、 ばらされたら興ざめするわ、そのあと仕掛け人側にまわってあんたと鶴屋さんをだますことになって……それはそれで面白そうだけど」 どっちなんだよ。 「やっぱそれはだめよ、あんたのもどかしい推理なんてみてたらあたしきっとイライラしてすぐばらしちゃうわ」 ハルヒは腕を組んで考え込んだかと思うと、頭を振って考えを否定した。あーもうお前の好きにしろよ。 「取りあえずこのあとお前の部屋に集合なんだな、でも寝ちまった俺の妹と付き添ってる鶴屋さんはどうすんだ?」 「そうね、一応鶴屋さんにはあたしが声をかけておくわ、キョンは有希と古泉くんを呼んできてちょうだい」 さて、こうなったら俺は成り行きに身を任せるしかない、あれこれ考えるのは一旦終了だ。 俺は長門と古泉を呼びにいくために部屋から出る。出る直前、部屋の時計が目に入った、 もうすぐ午後十一時になろうとしている。 朝比奈さんがいなくなったのが九時半ごろだったからそろそろ一時間半ほどたっているな、 俺としてはもっと時間が経過してる気分だったんだがな、きっと俺の中の朝比奈さん分が不足しているからに違いない、 はやく補給しないと欠乏症になって思考能力や気力が低下しちまうぞ。 廊下を進み、長門の部屋の前にきたが、俺一人で行くとまたどっかの誰かが勘違いするかもしれん。 と、いうわけでまずは古泉を見つけるとすっか。 古泉はすぐに見つかった、一階で新川さんや森さん、多丸さん達と何やら相談していたようだ。 とはいえ、あからさまに相談しているわけじゃなく、それぞれ別の部屋で自分の役割をこなしながらだ、 この辺、俺はさすがだな、と感心する。 俺は古泉に、今のところハルヒに対しては順調に進んでいることを伝えた。 「で、そっちはどうだ? その様子だとあんまり状況は変化していなさそうだが」 古泉はいつもの営業スマイルを50%OFFにして、 「そうですね、我々としましては今まで事前準備か事後処理の方を主に活動してきましたからね、 ですから我々の出番は事件が解決してからですね、つじつま合わせの解説役なら得意分野なので任せてください。 そしてあなたにはうまく涼宮さんを誘導してもらえればよろしいかと」 そううまくいけばいいんだがな、あいつは手綱も騎手もお構いなしに、 空を自由に飛ぶペガサスのフリをしたじゃじゃ馬だからな。 そういやそのじゃじゃ馬が呼んでるんだった。あんまり遅いとまた罰金なんて言われかねん。 「とりあえずハルヒの部屋に集合だそうだ、あと、途中で長門も連れていくぞ」 ではまた後ほど、っと言って新川さんや森さん、多丸さんたちに一礼した古泉と俺はその場を後にした。 二階に上がった俺たちは、まず長門の部屋に向かう。 さっきはノックする直前で扉が開いたのだが、今回は普通にノックすることができた。 「長門、いるか? ハルヒの部屋に集合だそうだ、この事件に関してみんなの意見を聞くらしい」 返事がないのはいつものことで、長門は無言で扉を開けてくると思っていた。しかし、 しばらく待っても何のアクションも起きなかった。 「長門? ……いないのか?」 もう一度ノックしたあと、俺はゆっくりと扉を開けた、鍵はかかっていない。 予想通り、中は無人だった。この情景は朝比奈さんがいなくなった時を思い出させ、一抹の不安を俺の心に落とす。 だが、長門のことだ、呼ばれてることを察知してすでにハルヒの部屋に行ったんだろう、と俺は思い直し、 「なんだ、先に行っちまったのか、無駄足だったな」 古泉は複雑な顔をして肩をすくめていて、俺はいつものようにハルヒに、遅い! などと言われそうだなと思い、 足早にハルヒの部屋に向かった。 この時にはまだ、俺は気付いていなかったのだ。すでに長門も行方不明になっていたことを。 そのことを知ったのはハルヒの部屋に行った後のことだった。 挿絵 つづく